「……ユウさん、大丈夫ですか?」
「ゼロス……っ!?」
いつの間にそこに居たのか。
私はゼロスに身体を抱きとめられていた。
「危ないですから、僕から離れないでくださいね」
「ぇ? ちょ……」
腰にガッシリと腕をまわされ、身動きが取れない。
「ちょっと、ゼロス! ふざけてる場合じゃないでしょうっ!?」
「……ふざけてなんかいませんよ」
振りほどこうともがく私に、降ってきた真面目な声。
それにはどこか悲愴感が含まれている様な気がして、私は思わず動きを止めた。
───すると。
「どうしてユウさんは危険に飛び込もうとばかりするんでしょうね?」
「…………ゼロス?」
後ろから抱きしめ離さないゼロスの表情は窺い知る事が出来ない。
それをもどかしく思いながら呼び掛けると、彼はコテンっと私の肩に顔を埋めた。
そしてそれきり動かなくなる。
聞こえて来るのは小鳥のさえずりと木々のざわめき。
気づけばここはリナさん達がいる場所から少し離れているらしかった。
きっと、ゼロスの言う危険から遠ざけてくれたのだろう。
「……ゼロス」
「…………」
後ろの彼に声をかけてみるが、まるで無反応。
リナさん達の事も気になるが、今は彼女達よりも、この大きなダダッ子を何とかしなければならないようだ。
私は「はぁ……」と溜め息を吐くと、後ろの彼に語りかけた。
「離してくれないと、ゼロスも濡れちゃうよ?」
私の身体はエヴィアの攻撃によって水浸し。
けれど、そんな事は構わないとばかりに、無言でぎゅっときつく抱きしめられた。
「……ゼロス?」
「…………」
「どうしたの? ゼロスらしくもない」
「…………」
私の問い掛けに、ゼロスは何も言わない。
何も答えない。
「いい加減にしないと怒るよ?」
「……っ」
その言葉にピクッと反応を示すものの、本気じゃないとわかってか、それとも引っ込みがつかなくなってか、ゼロスは離れようとはしなかった。
私はこれ以上の説得は無理と諦め、再度溜め息を吐くとそっと手を添えた。
抱きしめ離さない彼の手に。
───すると。
何を思ったのか、彼はポツリと呟いた。
「あまり無茶な事はしないで下さい」
それが本心からの願いであるように思えて、私は小さく頷く。
「……不安なんです」
いつかユウさんが居なくなってしまいそうで。
囁くように告げられた言葉。
しかし。
私はそれに答える事が……───否。
応える事が出来なかった。
別れは来るから。
それもそんなに遠くない未来に。
私はただ、安心させるように、不安を取り除くように、肩口にあるゼロスの頭を撫でる。
「大丈夫だよ」
大丈夫。
そんな根拠の無い言葉を繰り返しながら。
私はゼロスの頭に自分の頭を傾けた。
あとがき
今はまだ、このままで。
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