「こんなもんでいかがでしょうか?」
詳しい話を聞くために、一時近くにあるオアシスに移動した私達。
そこでガウリイさんがアクアお婆さんの肩を揉んだり、アメリアさんが大きな葉っぱで扇いだり。
要するに情報を聞き出すためのご機嫌取りをしていた。
「あ〜、そこ効くのぉ」
「で、お婆ちゃん。写本の管理をしてるって言ったけど……って事はお婆ちゃんはどの写本に何が書いてあるか分かってるって事?」
「まぁ、そう言うことかのぉ」
「本当にぃっ!? だったら、あたし達が見つけようとしている写本のとこまで案内してくんないっ!?」
アクアお婆さんの答えに、リナさんが喜び勇んで交渉を持ち掛ける。
するとお婆さんは、快く頷いてくれた。
「あぁ、いいとも。それがあたしの役目だからのぉ」
その返事にリナさんが「やったぁ!!」と歓喜の声を上げる。
ようやく今までの苦労が報われるかもしれないのだ。
彼女の喜びも分からないでもない。
「で、お前さん方は何が知りたいんじゃ?」
「ずばり! 高位魔族に対抗できる方法よっ!」
人差し指をピッと立て、確固たる意志で答えるリナさん。
しかし、それを聞いたお婆さんの表情は一転、暗いものになった。
「なんとのぉ……」
「……ダメなの?」
そんなお婆さんを見て、リナさんが不安そうに声をかける。
しかし、ダメだと思われたそれは予想に反し、お婆さんは頭を振った。
「そういう訳じゃないんじゃ。その方法が知りたくば、とりあえず三日分程の食料が必要なんじゃ」
「三日分の食料だと?」
「何でそんなものが必要なの?」
訝るゼルガディスさんとリナさん。
お婆さんはそれに笑いながら答えた。
「なんせお前さん方が知りたがっている事が書かれた写本は、ここから往復三日程の所にあるもんでのぉ」
「そんなに遠いのかよ……」
うんざりとしたガウリイさんの声。
その気持ちは痛いほど良く分かる。
「何しろ無限とも言われるクレアバイブルの完全なる写本じゃからのぉ」
「なーる程ね! んじゃ早速食料調達ぅ♪」
「はい!」
「よぉし、メシメシメシーぃ!!」
ご飯の事となると目の色が変わるリナさん達に呆れつつ、駆け出した彼女達を追おうとした───が、次の瞬間。
「あぁ、ちょっとお前さんは残ってくれんかのぉ」
「……はい?」
お婆さんに声をかけられ、私は踏み出しかけた足を止めて振り向いた。
そんな私達に気付いたのか、リナさんはコチラを窺い、お婆さんに問い掛ける。
「お婆ちゃん、ユウがどうかしたの?」
「いやいや、少し話相手が欲しいだけじゃ。なんせここに人が来るのは久しぶりだからのぉ」
ほっほっほっと笑うその声は、暢気なふうを装ってはいるが、その笑顔には何故か有無を言わせぬものがある。
…………仕方ない。
私は小さく溜め息を吐くと、リナさん達へと振り返った。
「リナさん。そういう訳なので、私の分の食料もお願いしますね」
「……わかったわ」
チラリ……とお婆さんの後ろにいるゼロスへと視線を投げ、頷くリナさん。
お婆さんが何かを仕掛けて来ることは多分無いだろうが、しかし万が一ということもある。
そんな時はゼロスに頼れと言うことだろうか……。
「それじゃあ、行ってくるわね! なるべく早く戻って来るわ」
「はい、いってらっしゃい」
私は笑顔でリナさん達を見送り、そして彼女達の姿が見えなくなった頃。
再び私はお婆さんと向き合った。
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