「……さて、ユウさんと言ったかのぉ?」
「はい」
その言葉を皮切りに、辺りの空気は一変する。
先程とは違い、お婆さんから射る様な視線を向けられたのだ。
「お前さん───何者なんじゃ?」
その直接的な問い掛けに、私は苦笑した。
何者……と言われても。
答えに困る上に、この場にはゼロスもいる。
出来る事なら、彼にはまだ知られたくなかった。
私がいずれココから居なくなる事を。
絶対的な別れの時が近付いている事を。
それが私の我が儘だとしても。
今はまだ、彼には悟らせたくなかった。
───故に私は質問をはぐらかす。
「これまた、随分と不躾な質問ですね……何者と言われても、ただのしがないパシリ巫女としか言いようがないです」
苦笑混じりに答える私。
しかし。
お婆さんはそんな言葉は気にも止めず、更に言及してきた。
「お前さん……この世の者ではないじゃろう?」
「……足ならちゃんとありますよ? 人間である事も保証します……って、私が言っても信じてもらえませんかね?」
「いや、人である事は認めよう。だが、お前さんはこの世の理から逸脱した存在。そんなお前さんが一体何を企んでおる?」
「……別に何も」
私は肩を竦め、溜め息を吐く。
随分とまぁ、買いかぶられたものである。
「大体一介の人間に何が出来ると? 私はただ、『母』にお使いを頼まれただけです。面倒で厄介なお使いを……ね」
「………………」
そう言って微笑むと、お婆さんは探る視線で私の目をジッと見つめ、しばしの時が流れた。
何とも言えない、嫌な沈黙。
そして。
───先に折れたのはお婆さんだった。
「お前さん……のほほんとしているようで、その実、かなりの曲者のようだのぉ」
「まぁ、上には上が居ますけど……ね」
溜め息を吐くお婆さんに、私はゼロスを見ながら言った。
すると彼はいたたまれなかったのか、困った様に笑いながら、頬を掻く。
「して、お前さんのお使いとは何なのかのぉ? ココに来たということは、異界黙示録関連なんじゃろ?」
「えぇ、まぁ……」
「ほっほっほっ、そう警戒せんでもえぇ。不躾な質問をしたお詫びに、異界黙示録の知識を教えてあげよう」
「…………」
曖昧に答える私に、お婆さんはそう付け加えた。
……なる程。
尻尾を出さない私に親切心を見せ、情報と引き換えに目的を暴くつもりか……。
善意の中に潜む、巧妙な罠。
───が、それは私にとって願ってもない事。
私はフッと息を吐くと前を見据えて微笑んだ。
あとがき
お使い───任務遂行のための旅路。
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