キュウチ(1/5)

「……私が知りたいのは……」



ピン……と空気が張り詰める。

この続きを言ってしまえば、もう後戻りはできない。

私は息を吐き、拳に力を込めると、真っ直ぐ前を見据えて言葉を紡いだ。





「水竜王秘伝、フルコースのレシピ」





ピキッ。

その瞬間。

先程までの張り詰めた空気が嘘の様に、辺りは音をたてて凍りついていた。



























「……あの……ユウさん?」

「何?」

「今のは笑う所でしょうか?」



先に硬直から脱したゼロスが、おずおずと尋ねてくる。

───が、しかし。



「残念ながら、私は至って真面目よ」

「……ですが」



納得いかないと言わんばかりに眉を顰める彼に、私は溜め息を吐いた。

ゼロスの言いたい事は分かる。

これだけ勿体ぶっておいて、目的がただのレシピなのだから。



「まぁ、納得は出来ないだろうけど……むしろ私も納得してないけど、それが事実よ」

「……はぁ」



その言葉に、ゼロスは気の抜けた返事をした。

まぁ、その気持ちは分からないでもない。

私だったら呆れて盛大な溜め息の一つや二つは吐いていただろう。



「それで、アクアさんはご存知ですか? 秘伝のレシピについて」



未だ固まっていたお婆さんに尋ねると、アクアさんはハッとしたように正気に戻り、頷いた。



「あ……あぁ、それなら知っているよ」

「そうですか。なら一安心ですね。これで世界は滅びなくて済みます」

『………………』



私の言葉に再び動きを止める二人。



「あの……ユウさんのお母様とは一体?」

「あぁ、気にしないで。言葉の通りだけど、滅びる時は一瞬だろうから」

「えーと……過激なお母様なんですね」



過激というか、凄まじいというか……獰猛(どうもう)というか。

ゼロスの言葉に、私はただ一言「そうね」と返事を返して溜め息を吐く。



「とりあえず『スープ』の作り方から……」

「ユウーっ!!」

「ぇ……?」



教えて下さいという言葉は、リナさんの声に掻き消された。

見れば彼女達は荷物を運搬する動物に、山盛りいっぱいの食べ物を乗せ、コチラに向かって手を振りながら走っている。

どうやら言葉通り、早めに帰ってきてくれたようだ。

隣ではお婆さんが食べ物の山を見て、驚きの声を上げていた。



「ひゃあ、それが三日分の食料かい?」

「ま、こんなもんでしょう♪」



私達の元にたどり着いた彼女達にお婆さんが声をかければ、笑顔で答えが返ってきた。

まぁ、普通は一週間以上はもつ量だけど、リナさんやガウリイさんにとってはまさに朝飯前の量だろう。



「足りなきゃリナはコイツ等まで食うからな」

「誰が食うかいっ!!」



食料を運んできた動物を指しながらのガウリイさんの言葉に、すかさずリナさんのツッコミが入る。

そんな二人を見ていたゼルガディスさんは、呆れた視線を飛ばした。



「いつまで馬鹿な事言ってる。出発するぞ」

「あー、待ってよ。せっかちなんだから……ん?」



彼について行こうとしたリナさんは、お婆さんの行動に動きを止める。

何故かアクアお婆さんは彼女の背に飛び乗ったのだ。



「ちょっとお婆ちゃん?」

「年寄りにはこの道は結構こたえるでのぉ」

「えぇっ!?」



つまり運べと言うことらしい。

ちゃっかりしてると言うか……何と言うか。

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