「……私が知りたいのは……」
ピン……と空気が張り詰める。
この続きを言ってしまえば、もう後戻りはできない。
私は息を吐き、拳に力を込めると、真っ直ぐ前を見据えて言葉を紡いだ。
「水竜王秘伝、フルコースのレシピ」
ピキッ。
その瞬間。
先程までの張り詰めた空気が嘘の様に、辺りは音をたてて凍りついていた。
「……あの……ユウさん?」
「何?」
「今のは笑う所でしょうか?」
先に硬直から脱したゼロスが、おずおずと尋ねてくる。
───が、しかし。
「残念ながら、私は至って真面目よ」
「……ですが」
納得いかないと言わんばかりに眉を顰める彼に、私は溜め息を吐いた。
ゼロスの言いたい事は分かる。
これだけ勿体ぶっておいて、目的がただのレシピなのだから。
「まぁ、納得は出来ないだろうけど……むしろ私も納得してないけど、それが事実よ」
「……はぁ」
その言葉に、ゼロスは気の抜けた返事をした。
まぁ、その気持ちは分からないでもない。
私だったら呆れて盛大な溜め息の一つや二つは吐いていただろう。
「それで、アクアさんはご存知ですか? 秘伝のレシピについて」
未だ固まっていたお婆さんに尋ねると、アクアさんはハッとしたように正気に戻り、頷いた。
「あ……あぁ、それなら知っているよ」
「そうですか。なら一安心ですね。これで世界は滅びなくて済みます」
『………………』
私の言葉に再び動きを止める二人。
「あの……ユウさんのお母様とは一体?」
「あぁ、気にしないで。言葉の通りだけど、滅びる時は一瞬だろうから」
「えーと……過激なお母様なんですね」
過激というか、凄まじいというか……獰猛というか。
ゼロスの言葉に、私はただ一言「そうね」と返事を返して溜め息を吐く。
「とりあえず『スープ』の作り方から……」
「ユウーっ!!」
「ぇ……?」
教えて下さいという言葉は、リナさんの声に掻き消された。
見れば彼女達は荷物を運搬する動物に、山盛りいっぱいの食べ物を乗せ、コチラに向かって手を振りながら走っている。
どうやら言葉通り、早めに帰ってきてくれたようだ。
隣ではお婆さんが食べ物の山を見て、驚きの声を上げていた。
「ひゃあ、それが三日分の食料かい?」
「ま、こんなもんでしょう♪」
私達の元にたどり着いた彼女達にお婆さんが声をかければ、笑顔で答えが返ってきた。
まぁ、普通は一週間以上はもつ量だけど、リナさんやガウリイさんにとってはまさに朝飯前の量だろう。
「足りなきゃリナはコイツ等まで食うからな」
「誰が食うかいっ!!」
食料を運んできた動物を指しながらのガウリイさんの言葉に、すかさずリナさんのツッコミが入る。
そんな二人を見ていたゼルガディスさんは、呆れた視線を飛ばした。
「いつまで馬鹿な事言ってる。出発するぞ」
「あー、待ってよ。せっかちなんだから……ん?」
彼について行こうとしたリナさんは、お婆さんの行動に動きを止める。
何故かアクアお婆さんは彼女の背に飛び乗ったのだ。
「ちょっとお婆ちゃん?」
「年寄りにはこの道は結構こたえるでのぉ」
「えぇっ!?」
つまり運べと言うことらしい。
ちゃっかりしてると言うか……何と言うか。
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