───その後。
割りと直ぐに野宿することになり、テントを張って眠りに就いた。
……までは良かったのだけれど。
「……ふぁ」
「おや、寝ないんですか? ユウさん」
あくびを噛み殺したところで、そうゼロスに問われ、私は眠い目を擦りながら彼へと視線をやった。
「お疲れなのでしょう?」
「んー、まぁ……そうなんだけどね……」
アメリアさんがうなされてて、その声で起きてしまったのだ。
さすがのリナさんもアメリアさんの声と寝相の悪さとで目が覚め、取り押さえたりしたのだけれど、彼女が起きる気配は一向になく。
仕方なく私達は彼女が落ち着くまでの間、外に避難することになった……という訳である。
「それで、リナさんは?」
「んー……? 見張りをしてたガウリイさんと微笑ましい雰囲気になってたから、邪魔しちゃ悪いかなぁって」
言って指差した方には、たき火の前で寄り添って座る二人の姿。
「……なる程。それじゃあ、僕らも二人にならって寄り添いましょうか♪」
言ってゼロスは隣に腰を下ろし、私の肩を抱くようにマントで包み込んだ。
「……ゼロス……?」
「夜は冷えますから」
「……ありがとう」
ニコニコ笑う彼から温もりが伝わって来る。
この温度がとても心地好い。
この時間軸に来た当初は、まさかこんなにゼロスが優しくしてくれるとは夢にも思わなかった。
何と言っても睨まれたくらいだし。
それが今では手を貸してくれようとしたり、気遣ってくれたり……。
随分と親しい関係になったものだ。
真横にある顔をジッと見れば、それに気づいたゼロスが笑みを携える。
「そんなに見つめられると穴が開いちゃいます」
「…………………」
冗談めかす彼の言葉をそのままに、私は小さく吐息をついた。
隣では「そんなあからさまに呆れないでくださいよぉ」とか色々文句を言っているが……。
まぁ……放っておいても支障は無いだろう。
そんな事よりも、温かな温度が眠りへと誘い始め、あらがう術の無い私の思考は、急速にその働きを鈍らせていた。
そんな私の様子に気づいたのか。
ゼロスは不平の言葉を一旦切ると、私の顔を覗き込んでくる。
「……ユウさん?」
「んー……?」
「眠いんですか?」
「んー……」
尋ねられた事にも生返事しか返さない私に、彼がクスッと笑った気配がした。
しかし今はそんな事はどうでも良い。
心地の良い温度。
心地の良い声。
「寝ちゃっても構いませんよ? 後でテントに運んで差し上げますから」
「…………ん」
瞼は重くなり、私はゼロスの言葉に甘え目を閉じ、彼の肩に頭を預けた。
「ゆっくり休んでください。明日もいっぱい歩くでしょうから」
「…………そうね」
石版への道のりは往復三日。
何事も無く順調に行けば、明日には石版にたどり着く事が出来る。
その時、リナさんは……私は……。
どうするのかな……。
微睡みの中、うっすら開けた瞳にリナさんを捉え───。
私の思考は瞬時に覚醒した。
アクアお婆さんがリナさんに話かけていたのだ。
嫌な予感がする。
それは直感だった。
思った時には私は立ち上がり、ゼロスの掛けてくれたマントが肩からスルリと滑り落ちる。
「……ユウさん?」
「ごめん、話はまた後で」
一体こんな時間に何を……?
何か呟いたゼロスが気になったが、聞き返している暇はない。
私はドコかへ向かってるリナさん達を追うべく、走り出していた。
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