(4/6)

───砂埃が晴れた後。



「ユウさん、僕の事は気にせず逃げてくださって良かったんですよ?」



そこに一人佇む私を見て、ゼロスが笑顔と困惑をない交ぜにした表情で、そう言った。

この場合、逃げた方が良かったのは確かだ。

ここに留まったからと言って、私に出来ることは何もない。

むしろゼロスの負担にしかならないだろう。

それが分かっていても、私は逃げる事が出来なかった。

そう、出来なかったのだ。

私は静かにゼロスに語りかける。



「そんな事……出来る訳ないじゃない」

「……ユウさん」














「逃げる手段もないのに」

「………………は?」

「知ってる? 翔封界(レイ・ウィング)って扱いが難しいって」













知識としては知っていた。

浮遊(レビテーション)よりも移動速度が格段に速いことも。

便利な事も。

───しかし。



「使えないんだよね……昔、術の制御に失敗して以来、練習やめちゃったから」

「………………」



そう。

私がここに残ったのは、別にゼロスの事が心残りだったからという訳じゃない。

気にならない……という訳ではないが。

むしろ先程述べたように、私がいない方が何とでもなっただろう。



「だから逃げなかったというより、逃げられなかったって言う方が正しいかな」

「………………」



がっくり。

そう表現するのが一番適しているくらい肩を落としたゼロスは、しかし。

次の瞬間にはガバッと顔を上げ、私に詰め寄ってきた。



「ユウさぁんっ! ココは嘘でも僕が心配だったからとか、僕を一人に出来ないとか言うところでしょうっ!?」



涙すら浮かべ迫り来るゼロスに、私はたいした表情も浮かべぬまま、彼に問う。



「……嘘で良いの?」

「え?」

「ゼロスは嘘の心が欲しいの?」

「いえ……出来れば……」

「ゼロスを置いていくなんてできないわー。きゃー、ゼロス頑張ってー。あなたならどんな困難にも打ち勝てるって信じてるー」

「…………すみません。僕が悪かったです」



両手を胸の前で組んで、棒読みで並べると、彼は素直に謝った。

それを見ていた魔竜王は、私を見て笑う。



「くっくっくっ、面白れぇ姉ちゃんだな」

「お褒めにあずかり光栄です」

「くくっ、その度胸も大したもんだ。人間にしておくのは惜しいな」



………………どういう意味ですか、それ。

ツッコミたいのはやまやまだが───……しかし。



「……ユウ……と言ったか?」



私の思考は魔竜王の一言で凍りついた。



「どうだ、オレの仲間にならねぇか?」



そんな恐ろしい言葉を耳にして。

<<>>
[ 戻る ]


ALICE+