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砂丘の上に、胸をそらせた立ち姿。

露出度の高い服に、縦ロールの髪。

マントをはためかせ、不敵な笑みを浮かべるその人物は───。



『マルチナぁっ!?』



……そう。

そこに佇んでいたのは、まごう事なくマルチナさんその人だった。



「またとんでもないタイミングで、とんでもないのが現れやがったな」

「よりにもよってこんな時に……」

「マルチナさんらしいと言えば、マルチナさんらしいですけどね……」



ゼルガディスさんとリナさんに続き、私も呆れながら呟く。

が、いつものごとく当の本人には届いていなかった。

彼女はさっそくゼロスを見つけると、喜々としてコチラに向かって駆けて来る。



「ゼロス様ぁ! お助けに参りましたわー!」

「マルチナさん……」



さすがにコレには苦笑せざるを得ない。

そんなゼロスに、リナさんは「アンタ責任とんなさいね、責任っ」と、呆れたように力なく言った。

まぁ、ゼロスが思わせぶりな態度を取っていなければ、ココまでマルチナさんが追って来ることも無かった訳で。

そう考えると、やはり責任はゼロスにあるだろう。



「ゼロス様……っえ!? きゃあーーーーっ!!」



そして。

一目散に想い人の元へ駆けて来るマルチナさんは、砂に足を取られ───頭から地面に突っ込んだ。

それでも、愛のなせる業か執念か。

砂に埋もれたまま斜面を滑り、無事(?)ゼロスの前までたどり着く。



「だぁっ、もう! 何しに来たんだコイツはっ!?」

「ゼロス様っ!」



リナさんが思わず突っ込むものの。

砂から頭を出したマルチナさんは、やはり聞いちゃいなかった。

彼女はキラキラと恋する乙女の視線をゼロスに向け───ふと、彼が肩を押さえていることに気づき、心配そうな眼差しを向ける。



「ゼロス様……! お怪我を!?」



そんな彼女に、曖昧な笑顔で返すゼロス。

すると彼女の瞳に怒りの色が灯った。

マルチナさんはスッくと立ち上がると、魔竜王を睨みつけながら言う。



「ゼロス様! このマルチナ=ゾアナ=メル=ナブラチロワが来た以上、もう心配いりませんわっ!!」

「アンタが来たからって何がどーなるって言うのよっ!?」

「決まってるでしょ! こんな奴ら、ちょちょいのちょいで追っ払うのよ!」



胸を張り、啖呵(たんか)を切る彼女はむしろ頼もしくも思える。

……けれど。

それが出来れば苦労はしない。

リナさんは魔竜王に指を突き付け、怒りながらも現状を説き伏せた。



「あのね! コイツを誰だと思ってんのっ!? コイツは、魔竜王ガーヴよっ!!」



───しかし。



「……何なの? それ」



キョトンと不思議そうな顔をするばかりで、今がどれ程危険な状況なのか、露ほども分かってはもらえなかった。

……そう言えば彼女、レッサーデーモンやブラスデーモンも知らなかったはず。

そんな彼女に、魔竜王を理解しろと言う方が無理な話かもしれない。



「だあぁぁぁぁあっ! だから!! ガーヴっていうのは魔族の最高幹部の一人なの! とんでもなく強いの! アンタが出って……あ゛ぁ話しを聞けぇーっ!!」



がんばれ、リナさん。

声を大にして説明、説得を試みるも、聞く耳持たずのマルチナさんは話の途中で無謀にも魔竜王へと近づいて行く。



「とにかく、ガーヴだかガーターだか知らないけど……」

「あぁっ!? どこへ行くぅ!!」

「所詮は魔人ゾアメルグスター様の敵ではありませんわ! さあ、かかってらっしゃい!」



堂々とゾアメルグスターの紋章をガーヴへと掲げ、踏ん反り返るマルチナさん。

知らないという事は、ココまで人を大胆に出来るのか……。

「いやあぁぁぁっ! 挑発しないでーっ!!」と、絶叫しているリナさんの隣でそんな事を思いつつ、私は一つ溜め息をついた。

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