「えぇっ!? 魔族っ!?」
リード村にある小さな宿屋。
現状把握と、これからの方針を決める為に述べられた真実に、マルチナさんは声を大にして驚いていた。
「ぜ、ゼロス様が魔族だったなんて……っ!?」
まぁ、今まで散々魔族には色んな目にあわされて来たのだ。
その驚きもひとしおだろう。
「いやぁ〜、実はそうだったんですよ」
「そ、そんなっ!?」
そのマルチナさんの驚きに対し、ゼロスは笑顔で答えた。
悪びれもせずに。
しかし、マルチナさんにとっては重い事実である。
何と言ってもゼロスの為に、あの魔竜王にすら楯突く程、彼を想っていたのだ。
彼女はショックを隠しきれず、涙を浮かべながら走り出し、
「わたしを騙してたのねっ!? もう誰も愛せなーいっ!!」
ドガッ───!
言って近くのテーブルを薙ぎ倒しながら、彼女は宿屋を出て行ってしまった。
そんなマルチナさんを見送った後、私はこの出来事を引き起こした張本人。
ゼロスを見ながらポツリと言う。
「ゼロスさんたら悪い人ですね。女の子泣かせるなんて」
「えっ!? ちょ、ユウさんっ!?」
「よっぽとショックだったみたいだなぁ」
私の隣で慌てふためくゼロスをしり目に、ガウリイさんはマルチナさんの去っていった扉を見つめながら、しみじみと呟く。
それにいち早く反応したのはアメリアさんだった。
「そりゃあ、そうですよ。リナさんやユウさんは知ってたんですか?」
「まぁ……ね」
「えぇ……それなりに」
「……気に食わんな」
アメリアさんの問いに答えれば、面白くないと言わんばかりの表情で、ゼルガディスさんに睨まれる。
私は苦笑しながら、その視線から逃げるように目の前にあるカップに口づけた。
「でも、どうしてゼロスさんが魔族なんて……」
アメリアさんはその顔に一瞬悲しい表情を見せ───しかし、その直後。
彼女は拳を握りしめながら力説を始めた。
「今からでも間に合いますっ! 直ぐに魔族なんてアコギで因果な家業はやめて、真人間になるんですっ!!」
「や……そういう訳にも……」
彼女の説得に、額に汗するゼロス。
まぁ、それもそうだろう。
仮に、いくら本人が望んだところで、簡単に人間になれるはずも無いのだから。
その後も続く彼女の説得に、彼は困ったように私を見つめてくる。
いや……私に、どうしろと。
しかし、助け舟は意外なところから出た。
「まぁまぁ、ゼロスだって好きで魔族に生まれた訳じゃないんだから」
ガウリイさんである。
彼は宥めるような口調で言い……───しかし。
正義の暴走娘は止まらない。
「何を言ってるんですかガウリイさんっ! 魔族って言うのは生きとし生ける者の天敵っ!! 百害あって一利なしっ!! そんな人と今まで旅をしてきたなんて……っ」
「いや、あの……そこまで言われると僕としても……」
目眩すら起こし、ふらつく彼女に、ゼロスは困り顔で呟く。
そこにこれまたガウリイさんが、今度は爆弾を投下してくれた。
「けどオレ、ゼロスが魔族だって薄々気付いてたぞ?」
その言葉に一瞬空気が固まり───、
『えぇぇえええぇぇっ!?』
次の瞬間。
ゼロスを含め、ガウリイさんを除く全員の叫びが宿にこだました。
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