───ゼロスは言う。
「だってユウさん言ったじゃないですか。側に居てもらうのは、独り寝が寂しい夜に最適だって。なので側に居てくださいね♪」
「いや……私寂しくないし」
「僕が寂しいんですよ」
ベッドに乗り込んで来た彼はそう言って、私の隣で横になった。
この状態で心地よい眠りに有りつけるかと言えば、否である。
故に私は突き放すように、彼へと言った。
「ならアメリアさんに居てもらえばいいじゃない。喜んで生の讃歌と言う子守唄を聞かせてくれるよ、きっと」
「僕はユウさんが良いんですよ♪」
「迷惑です」
「まぁまぁ、そんな事言わずに」
「私は眠いの、すごく眠いの、今すぐ寝たいの」
「僕は勝手に側に居させてもらいますから」
……………それもどうかと思うが。
しかし。
布団の上からポン、ポン……とリズムをとるゼロスの行動に、急激な睡魔が襲いきた。
思考は鈍り、段々全てがどうでも良くなってくる。
見ればゼロスはおとなしく隣にいるだけだし。
……まぁ……いっか。
今はとにかく眠りにつきたい。
私は一言「おやすみ」と呟き、ゼロスに背を向け瞼を閉じた。
すぅ……っと意識が遠退き、意識を手放そうとした……───その瞬間。
突然ひんやりとした物が脇腹を通り、お腹を撫でさする。
「ひゃっ……」
さらにそれは太ももへ移動し、内側へとゆっくりと伝い進む。
その冷たさとくすぐったさに身を固めると、今度はもう片方が服の下へと入り込み、再びお腹を撫で回し、胸元へと這いあがってきた。
そして後頭部に柔らかい感触。
「ユウさんの髪って綺麗ですねぇ……いい匂いですし。シャンプーの匂いですかねぇ?」
ちゅ……という音に続き、何とも暢気な呟きが聞こえてくる。
「お肌も旅をしてるのに白いですし、もちもちですし♪」
「って、ゼロスッ!」
いい加減頭にきて、至るところを行き来する手を捕まえ、私はガバッと後ろを振り向いた。
そして、全然おとなしくないゼロスに対し、声を荒げる。
「いい加減にしてっ!!」
「おや、どうしたんです?」
「どうしたもこうしたも、人の眠りを散々邪魔しておいてっ!」
いけしゃあしゃあと、まるで自分に非が無いと言わんばかりの態度のゼロス。
彼に怒ったところで、のれんに腕押しなのは重々承知だが、言わずにはいられなかった。
「私は眠いのっ! 寝たいのっ!! そう言ってるでしょうっ!?」
「えぇ、ですから寝てて下さって構わないんですよ。僕は勝手に側に居させてもらうからと言ったじゃないですか」
「脚やらお腹やらあちこち触られて寝れる訳ないでしょう! 大体、魔族は寝なくて良いんでしょうっ!? 添い寝する必要なんて無いじゃないですかっ! 一体どういうつもりなんですかっ!?」
一気にまくし立てる私。
「それは……」
「それはっ!?」
怒りを含んで聞き返す私に、ゼロスは笑みを深くすると人差し指をピッと立て、
「あ・て・つ・け♪」
と、指を振り振り、楽しそうにのたまう。
その刹那。
私の中でブチっと何かが切れる音が聞こえた気がした。
「当て付けじゃなくて、嫌がらせでしょうが!」
「いーえー。当て付けですよ」
「どこがっ!?」
「他にかこつけて非難や不満などの気持ちをこれみよがしに示す。すなわちコレ、当てつけです♪」
言って後ろから抱きしめ離さないゼロスに、私は前を向いたまま反論する。
「立派に嫌がらせじゃないですかっ!」
「違いますって。嫌がらせは人の嫌がる事をわざと言ったりしたりして困らせる事です。僕はユウさんを困らせたいんじゃなくて、ユウさんに不満を示したいだけなんです」
「私が嫌がってる時点で十分、立派な嫌がらせですっ!」
「まぁ、そこはあれですよ。見解の相違って事で♪」
「あぁもうっ! 一体何が不満なんですっ!?」
怒りに任せ、私がそう切り替えした……───。
その瞬間。
不意に。
空気が、
雰囲気が。
───……一変した。
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