抱きしめられていた腕に力が加わり、よりゼロスに密着する。
息を殺し、まるで感情すらも押し殺しているかのような彼。
そこに余裕は一切無く、ふざけた態度は微塵も感じられなかった。
「………………」
「………………」
静寂が、部屋を支配する。
聞こえるのは遠くの喧騒と、自分の心臓の音。
……トクン
……トクン
と、静かに。
穏やかに。
緩やかに。
いつの間にか怒りは鎮まり、私は溜め息をついていた。
───眠いんだけどな。
そう思いつつ。
私は後ろの彼に尋ねる。
「……不満なの?」
「…………不満だらけです」
自嘲に満ちた笑いと共に吐き出されたのは肯定の言葉。
私は更に問うた。
「何がそんなに不満なの───?」
───と。
彼は答える。
「……言い出したらキリが無いくらいです」
───と。
「……例えば?」
「……例えば……
───……例えば。
僕が魔族と知りつつ、そんな素振りを見せなかった事。
───……例えば。
僕に平気で他のヒトを近付けようとする事。
傷を負う事。
敵に軽口を叩く事。
自ら危険に飛び込む事。
構ってくれない事。
何より、
何よりも一番の不満は、
魔族が
人間に
捕われた事……───」
あとがき
当て付け。
───……構って欲くて。
ALICE+