ヘダタリ(1/6)

───ギシッ。



「責任……取ってくださいよ」



ベッドが軋み、気づけば私はゼロスに組み敷かれていた。

見上げれば、神秘的な瞳とぶつかり、私はただただ、それを見つめる。



「責任て……何の?」

「僕を不安にさせた責任です」



それは……お互い様でしょう?

言いながら彼の身体を押し退けようとするも、逆に押さえ付けられ身動きが取れなくなった。

掴まれた腕が。

肩が、熱を帯びて痛む。

仕方なく、私は溜め息をつき彼を見据えた。

───……すると。



「お互い様……? どこがです?」



目の前のゼロスは、口の片端を持ち上げ笑っていた。

あたかも、私とゼロスの想いは比べものにならないとでも言うように。

彼は嗤う。

───……嘲笑う。

そして。

それは一瞬の内に豹変し、



「僕を馬鹿にしたくせに」



怒りを含んだ言葉と共に睨まれ───その事に私は眉を顰めた。

───馬鹿にした……?



「……私が? ゼロスを?」

「無自覚ですか?」

「……………」



嘲りと共に笑われ言葉に詰まる。

が、私にはそんな事をした覚えはない。



「本当に分かってないみたいですね」

「だって分からないもの」



訳のわからない事を言われ、不機嫌を隠しもせずに言い返せば、再び鋭い視線に射抜かれた。



「自分の力量を考えずに動くから」

「ぇ……?」

「そう言ったじゃないですか」



確かに言ったが……。



「まさかユウさんに言われるとは思いませんでしたよ。僕としてはその言葉、そっくりそのままお返ししたいですね」

「あれは馬鹿にした訳じゃなくて……」

「じゃあ何だって言うんですかっ!?」



言葉の途中で怒りを爆発させ、言い募るゼロス。

先程よりも濃い怒りの色。

深い紫電の瞳。

酷く哀しげな瞳。

私はその瞳を真正面から見据え、そして静かに。

ゆっくりと、はっきりと。

彼に言い聞かせるように言葉を紡いだ。



「自分の力量考えずに動くから、痛い目に合うんです」



ピクッ。

と、ゼロスの片眉が持ち上がり、何かを言おうとした彼より早く。

彼の言葉を(さえぎ)り私は続ける。



「だから、少しは周りに頼っても……───私に頼っても……良いんだよ?」

「………………」

「本当はそう言いたかったの」



その言葉はアメリアさんに遮られてしまったけど。

そう告げるとゼロスはうつ向き、何かを堪えるように、我慢するように。



───ポツリと低く呟いた。



「そんなこと……っ」

「………………」

「そんなこと、出来る訳ないじゃないですかっ!」

「…………どうして?」

「僕は魔族ですよ?」



歴とした魔族。



「自分の力のみをよりどころに存在してるんです」



他を寄せつけず、己の力のみで。



「だから他の者に頼るなんて事はしないし、出来ないんですよ。ましてや───……人間になんて……」



『人間』。

その言葉を一瞬躊躇いながらも、ゼロスは言って私を見返した。

そこに先程までの怒りは無く、替わりに戸惑いと困惑が見てとれる。



「人間には頼れない?」

「───……はい」

「なら利用すればいいじゃない」

「…………」



呆気なく、さらりと言ってのける私にゼロスは目を見開き固まる。



「頼れないなら利用すれば良い」



私は喜んでアナタの策に溺れてあげる。



「得意分野でしょう?」



笑って言えば、彼は困った様に苦笑し、





「貴女と言う人は───……」














本当に───……敵いませんね。















言って彼は肩の力を抜くように、深く長い息を吐いた。

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