───ギシッ。
「責任……取ってくださいよ」
ベッドが軋み、気づけば私はゼロスに組み敷かれていた。
見上げれば、神秘的な瞳とぶつかり、私はただただ、それを見つめる。
「責任て……何の?」
「僕を不安にさせた責任です」
それは……お互い様でしょう?
言いながら彼の身体を押し退けようとするも、逆に押さえ付けられ身動きが取れなくなった。
掴まれた腕が。
肩が、熱を帯びて痛む。
仕方なく、私は溜め息をつき彼を見据えた。
───……すると。
「お互い様……? どこがです?」
目の前のゼロスは、口の片端を持ち上げ笑っていた。
あたかも、私とゼロスの想いは比べものにならないとでも言うように。
彼は嗤う。
───……嘲笑う。
そして。
それは一瞬の内に豹変し、
「僕を馬鹿にしたくせに」
怒りを含んだ言葉と共に睨まれ───その事に私は眉を顰めた。
───馬鹿にした……?
「……私が? ゼロスを?」
「無自覚ですか?」
「……………」
嘲りと共に笑われ言葉に詰まる。
が、私にはそんな事をした覚えはない。
「本当に分かってないみたいですね」
「だって分からないもの」
訳のわからない事を言われ、不機嫌を隠しもせずに言い返せば、再び鋭い視線に射抜かれた。
「自分の力量を考えずに動くから」
「ぇ……?」
「そう言ったじゃないですか」
確かに言ったが……。
「まさかユウさんに言われるとは思いませんでしたよ。僕としてはその言葉、そっくりそのままお返ししたいですね」
「あれは馬鹿にした訳じゃなくて……」
「じゃあ何だって言うんですかっ!?」
言葉の途中で怒りを爆発させ、言い募るゼロス。
先程よりも濃い怒りの色。
深い紫電の瞳。
酷く哀しげな瞳。
私はその瞳を真正面から見据え、そして静かに。
ゆっくりと、はっきりと。
彼に言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「自分の力量考えずに動くから、痛い目に合うんです」
ピクッ。
と、ゼロスの片眉が持ち上がり、何かを言おうとした彼より早く。
彼の言葉を遮り私は続ける。
「だから、少しは周りに頼っても……───私に頼っても……良いんだよ?」
「………………」
「本当はそう言いたかったの」
その言葉はアメリアさんに遮られてしまったけど。
そう告げるとゼロスはうつ向き、何かを堪えるように、我慢するように。
───ポツリと低く呟いた。
「そんなこと……っ」
「………………」
「そんなこと、出来る訳ないじゃないですかっ!」
「…………どうして?」
「僕は魔族ですよ?」
歴とした魔族。
「自分の力のみをよりどころに存在してるんです」
他を寄せつけず、己の力のみで。
「だから他の者に頼るなんて事はしないし、出来ないんですよ。ましてや───……人間になんて……」
『人間』。
その言葉を一瞬躊躇いながらも、ゼロスは言って私を見返した。
そこに先程までの怒りは無く、替わりに戸惑いと困惑が見てとれる。
「人間には頼れない?」
「───……はい」
「なら利用すればいいじゃない」
「…………」
呆気なく、さらりと言ってのける私にゼロスは目を見開き固まる。
「頼れないなら利用すれば良い」
私は喜んでアナタの策に溺れてあげる。
「得意分野でしょう?」
笑って言えば、彼は困った様に苦笑し、
「貴女と言う人は───……」
本当に───……敵いませんね。
言って彼は肩の力を抜くように、深く長い息を吐いた。
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