「最近臨機応変な対応を求められることが多いから」
適応力が養われたみたい。
誰かさんのお陰でね。
そう悪戯っぽく笑えば、彼は何かが吹っ切れたように。
いつものように。
余裕の笑みを浮かべて言う。
「いかに面倒事を避けるか。それだけの為に鍛え上げたんでしょう?」
「……当たってるけど、その言い方は無いんじゃない?」
それじゃあまるで私が極度の面倒くさがりみたいじゃないか。
…………違うとは言わないけど。
「せめて、平穏無事に過ごすために努力を惜しまなかった賜物とか……」
「それこそお互い様ですよ」
「……まぁ……ね」
そう楽しそうに笑われて、今度は私が苦笑する。
───……そして。
『………………』
不意に訪れた二度目の静寂。
私はゼロスを見上げ、眺めるようにして彼を見た。
途端、遠い遠い昔から知っているような懐かしさが込み上げてくる。
魔族らしからぬ、温かな眼差しと。
気遣うように頬へと触れる冷たい手。
この面映ゆい、くすぐったい気持ちは、どこか覚えがある様な……。
「ユウさん……」
そんな事を頭の片隅で考えていると、ゼロスがゆっくり近づいてきた。
私は黙ったままそれを見て。
やがて彼の顔が間近まで迫った───その時。
コンコンッ。
「ユウまだ起きてるーっ?」
「明日の予定を……」
ノックの音に続き扉が開けられ、それとほぼ同時に飛び込んで来たリナさんとアメリアさんの声。
その刹那。
部屋の空気は音を立てて固まった。
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