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「もっと強ーくっ!」

「ぐぐ……」

「どうしたコラッ!」

「ぅぐぐ……」

「たくもう! 油断も隙もあったもんじゃないんだから!」



少年の家に上がり込み、少年にマッサージをさせながら、リナさんは腕を組み怒りをあらわにしていた。

まぁ、スリを働こうとしていたのだから、当たり前と言えば当たり前である。

ましてやそのターゲットがリナさんだったのだ。

このくらいの制裁で済んでいるのが、せめてもの救いというもの。



「ほら、もっと強く揉むっ!!」

「えぇっ!?」

「足りないよ!」



そんなやり取りをする二人を見て、嘆息するゼルガディスさん。



「この程度で済んだか……リナに喰われなくて良かったな、坊主」

「本当。いくら悪とは言え、こんな年端もいかない少年が八つ裂きにされる光景は見たく無いですもんね」

「そ、そんなに恐いのっ!? このお姉ちゃん……」



ゼルガディスさんとアメリアさんの呟きに、少年はリナさんを指差し怯えた様子を見せた。

それに対しガウリイさん達は、声を揃えて『うん』と力強く頷く。

その一言に、そのたった二文字に。

今までの苦労が現れているようだった。

そんな彼らの隣で、私は首を横に振り目を伏せる。



「……私の口からは何とも」

「身も心も折られますよね」

「ただ一つ言えるのは無事じゃ済まないって事だな」

「絶対回避不可能な厄災みたいなもんだからな」

「そ、そんなっ!?」

「あんたらねぇっ!」

「お姉ちゃんっ! 僕このままあのお姉ちゃんに一生こき使われるのっ!?」



私に縋り付き見上げてくる男の子に驚いたのは一瞬。

その驚きは後ろから刺さるような視線によって、束の間に消えさった。

じとーっとした視線が背中にまとわり付く。

しかし、今はその事を気にしていられるような状態ではなかった。



「僕イヤだよそんなのっ!」

「大丈夫ですよ……多分。何だかんだ言ってもリナさん優しいですし」

「ちょ……何言ってんのよ、ユウっ!?」

「そうですよっ! リナさんが優しいだなんてありえませんっ!」

「おいおい、大丈夫か? 変なもんでも食ったんじゃ……」

「それだけは天地がひっくり返っても絶対にありえん」



照れた様子のリナさんを遮り、次々に異論を唱える皆々様。

こうなると、後はもうお決まりのパターンである。

私は少年を引き寄せると、その場から一歩退いた。

───その直後。



「どやかましぃわっ!」



攻撃呪文が炸裂したのは言うまでもない。



「お、お姉ちゃぁんっ! 本当にこのお姉ちゃん優しいのっ!?」

「…………多分」

「ぁあ゛っ!?」

「ひぃっ!!」



リナさんに睨まれ、男の子は私の胸元に縋り付く。

私はプスプス焦げながら倒れ伏しているガウリイさん達を見ながら、彼の頭を優しく撫でた。

それを見て、怒りの治まらないリナさんは、言って腰に手を当て面白くなさそうに目をそらす。



「大体、盗賊キラーと呼ばれるあたしの懐狙っといて、この程度で済んでるんだから感謝してもらいたいわね!」



その言葉に、男の子はシュン……と落ち込んだ様子で、素直に謝った。



「…………ごめんなさい」

「ん……?」

「でも、僕どうしてもこの村を出たくて……お金が必要だったから……つい」

「確かに、こんな寂れた村に居るのは嫌かもなぁ……」



いつもの如く、リナさんの攻撃から早々と復活したガウリイさんは言って外を見る。

ひゅうっと木枯らしが吹き渡る広場。

お店に賑わいはなく、子供にしてみたらつまらない事この上ないだろう。



「ふ〜ん、世知辛い世の中ってやぁねぇ……」



呟くように述べ、しかしその後。

リナさんはビシッと少年に指を突き付けた。



「でも良いっ!? 働かざる者食うべからずってね! 楽して稼ごうなんて間違ってるわっ!!」



ズベシっ!



「リナさん……」

「お前が言うな」



床に突っ伏した彼等は、起き上がりざまに突っ込むが、それはリナさんのひと睨みで呆気なく引っ込まざるを得なくなる。

流石にこれ以上彼女を怒らせる図太い精神は、誰も持ち合わせていなかったらしい。

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