『本当に久しぶりだな……もっとも、わたしとしては二度と会いたくはなかったがな───……獣神官ゼロスよ』
にこやかに話かけたゼロスと相対するように、ドラゴン───ミルガズィアさんは不快感たっぷりに言った。
それにリナさん達が驚きの声を上げる。
「な、何よゼロス!!」
「貴様、竜族を知ってるのかっ!?」
「えぇ……以前にちょっと」
問いかけに、ゼロスは飄々と答えてみせた。
その顔には、いつもの笑顔が張り付いている。
それならそうと前もって……。
言うようなゼロスじゃないか。
大体、言っていたからってどうなる様な問題でもないし。
そんな事を思っていると、ミルガズィアさんは警戒と侮蔑を込めた眼差しをゼロスへと向け、言った。
「こうしてお主と顔を付き合わせるのは、降魔戦争以来だな」
その様子から、間違ってもフレンドリーな間柄ではない事は容易に感じ取れる。
そもそも、降魔戦争では敵対関係にあった竜族と魔族。
となれば当然、ゼロスとミルガズィアさんは敵として相まみえていたのだろう。
仲良く出来るはずがない。
『……それで……この谷に一体何の用だ? 獣神官よ』
「実はですね、ここにある異界黙示録に用がありましてね。こちらのお嬢さんに少々アレを使わせて頂きたいんです」
『人間にだと……?』
ゼロスの言葉に、ミルガズィアさんは訝しげに問い返した。
まぁ、ゼロスを魔族と知っているのならば、その対応にも頷ける。
ただでさえ怪しい上に、その魔族が人間に力を与えようとしているのだ。
勘ぐりたくもなると言うもの。
『何を企んでおるのだ?』
「企んでらっしゃるのは僕じゃなくて冥王様です。冥王様は目的が何なのか僕に話してはくれませんでしたが……ま、これも中間管理職の悲しい宿命ってやつでして、はっははは……」
笑いながら頭を掻くゼロス。
その姿を見て、私はやれやれと嘆息した。
冥王が話していなくても、ゼロスは目的を知っている。
否、この場合は予想がついていると言った方が正しいか。
しかし、どちらにせよゼロスはそれを言うつもりは無いらしい。
言うと不都合だからなのか、ただ単に秘密主義なだけなのかは分からないが……。
『断れば……どうする?』
「話し合い以外の手を考えます」
涼しい顔でサラッと物騒な事を言うゼロスに、ミルガズィアさんはしばし彼をジッと見詰め、
『───わかった』
やがて、重い溜め息と共にその一言を吐き出した。
『おぬしがその気になれば我らでは到底太刀打ちは出来まい。好きにするがよい───……ただし』
一言断るとミルガズィアさんは天に向かって吠え……───次の瞬間。
ゆったりとした服に身を包んだ、金髪の男のヒトが私達の前に現れた。
その彼は表情硬く、言う。
「このわたしも、それを見届けさせてもらうぞ」
───と。
どうやら先程の咆哮が変身呪文だったらしい。
そして。
ミルガズィアさんは私達を一瞥すると早速「ついて来るがよい」と踵を返したのだった。
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