「さぁ、それでは行こうか」
「え? それじゃあココが?」
リナさんに視線を戻すと、丁度ミルガズィアさんが足を止め、異界黙示録への道を促しているところだった。
しかし、辺りは何のへんてつも無い場所。
道幅の広い登り坂、切り立った崖。
一見、異界黙示録らしきものは見当たらない。
「どこっ? どこに異界黙示録があるって言うの?」
「こっちだ」
興奮しながら尋ねるリナさん。
それを受け、ミルガズィアさんは何の迷いも無く岩壁へと近付いていった。
その様子を私達は言葉無く見守る。
そして。
ミルガズィアさんが岩肌に手を伸ばすと、その指先が、すぅっ、と音も無く壁へと吸い込まれた。
「っ!?」
「この奥に異界黙示録がある。岩壁に見えるが普通に通り抜けられるはずだ」
言って彼はリナさんへと手を差し延べ、
「来るがよい、リナとやら。他の者はココで待っていてもらおう」
……………………ぇ?
待っていてもらおうって。
もしかして……私のさっきの決意って……無意味?
うわぁ……その展開は考えてなかった。
しかしココまで眠い目を擦りながら来て、はいそうですか、とは引き下がれない。
それはどうやらゼルガディスさんも同じだったようで、
「おい、どうしてリナだけなんだ」
と、面白くなさそうに尋ねる。
それに対し、ミルガズィアさんは無表情で答えた。
「ついて来たければ構わんが、はぐれてもわたしは知らんぞ。この奥は無限に広がる迷路だ。わたしとて、行って帰ってくるだけの道しか覚えておらん」
「……げ」
「魔族か竜族ならいざ知らず、人の身で迷えば一生を費やしてすら帰ることは出来んだろう」
「そうそう、その通りですよ♪」
ミルガズィアさんの言葉に、お気楽な声で同意するゼロス。
まぁ、魔族としては人間にホイホイ知識を与える訳にはいかないんだろうけど。
そして、その竜族と魔族の言葉は真実味を増したのだろう。
ガウリイさん達は顔を見合わせると、笑顔でリナさんを送り出した。
「それじゃリナ、オレ達はココで待ってるから」
「気をつけて行ってこい」
「お土産お願いします♪」
「あるかいそんなもんっ!」
………………うん。
前々から知ってはいたけど、皆さん実に自分に正直だよね。
ある意味羨ましいけど。
さて。
そうなると……。
「それじゃあ、その中に行くのはリナさんと私の二人って事で良いですね?」
そう確認すると、ガウリイさんたちは慌てて私を見た。
「二人って……おいおい、止めとけよ。聞いてただろ? あの中は迷路なんだぞ?」
「そうだ。お前さんなら迷子になりかねんぞ?」
「そうですよ! ボケッとしてたら一生迷宮の中なんですよっ!?」
「あっはっはっ。普段、皆さんが私をどのように見てたのか、よ〜く分かりました」
ニッコリ微笑み、彼らを見やると何故かガウリイさん達は一瞬肩をビクッと震わせ、
これまた何故か慌てて必死に言い繕う。
「いやいや、あんな所はユウみたいな娘が行くような場所じゃ無いって事で!」
「ああ。そういう場所は、非常識で図太い神経の持ち主が行くのが的確だろう」
「そうです! わたし達のような、善良な一般人が行くような所じゃありませんよっ!!」
一生懸命フォローの言葉を並べ立てる彼ら。
しかし、それは一方でリナさんを陥れており、それを聞き流す彼女ではない。
「ほっほう……? アンタら、言いたい事はそれだけ?」
『あ』
「よくも言いたい放題言ってくれたわねぇ?」
言って何やらブツブツ唱え始めたリナさん。
それに待ったをかけたのは、他ならぬ私だった。
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