───しばらくして。
ミルガズィアさんは歩みを止めることなく、ポツリと呟く様に言葉を発した。
「しかし、ゼロスが一目置くのも分かる気がする」
「そ? けど、ゼロスと長いお付き合いのミルガズィアさんには、到底敵わないでしょ」
半分冗談で返したリナさんに、何故か驚きの声を上げたのはマルチナさん。
「魔族と長い付き合いっ!? 悪いこと言わないから、やめときなさい! 最後にはコッチが泣きを見るんだからっ!!」
言って憂いを帯びた溜め息を吐く彼女に、リナさんは額に汗する。
妙に説得力はあるが……。
完全に意味を履き違えているマルチナさんは見事にスルーし、ミルガズィアさんは諦めにも似た溜め息を吐くと、静かに口を開いた。
「……長い付き合いか。何ゆえ、ココまでお前を連れて来たと思う?」
───ゼロスの。
魔族の望みをあっさり呑んで───。
「そりゃ、ゼロスとお友達……ってんじゃ無いのは分かるけど」
「怖いからだ。奴が」
その一言で、一瞬で。
辺りは重い空気に支配された。
先程の冗談とは比にならないその言葉。
───それは。
その言葉は、おそらく本心だろう。
こんな事、それこそ冗談で言えるような事じゃない。
『竜王』と異名を取る程の存在の弱音。
ミルガズィアさんは一つ溜め息を吐くと、やがて重い口を開いた。
あの、いつも何を考えているのか皆目見当もつかない謎の神官を怖れる理由を───。
悠か遠い、昔の出来事を。
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