「っ!?」
───しかし。
それはミルガズィアさんが翻したマントによって呆気なく消滅する。
それを見て、魔竜王は意味ありげな笑みを浮かべた。
「ほぉ? オレ様に盾突き、冥王に組すると言うのか?」
「愚かな。我ら竜族は誰の指図も受けん」
「ならば何故その娘を助けるっ!?」
ミルガズィアさんの言葉に、魔竜王が声を荒げた。
それに対し、ミルガズィアさんは淡々と答える。
「他でもない、この娘が生き続けようとしているからだ」
「そうか、なら仕方ない…………降魔戦争再びと行くか!!」
言って魔竜王はその身に力を纏い始め…………って、もしもし?
「あの……そろそろ離してくれませんかね?」
「おっと、忘れてたぜ」
「忘れないで下さい……」
「抱き心地がよくて、つい……な」
そう言いつつ意外にもあっさりと離してくれた彼に、私は拍子抜けしてしまった。
更に、
「だが、あまりオレから離れない方が良いぜ? 守ってやれなくなっちまうからな」
言ってガシガシと私の頭を撫でる魔竜王は、とても魔族には見えない。
いくら人の身とは言えど、その特性は限りなく魔族に近い魔竜王。
その豪快な兄の様な仕種に、私は思わず笑ってしまう。
人間くさい魔族。
私を心配してくれる魔族。
それらは容易に『彼』を彷彿とさせて……。
───……困ったな。
まさかそんな風に接してくるとは……。
私の意志はそんなに強くない。
惑い、迷い、揺れ動く。
魔竜王は敵なのに。
でも彼は彼なりに生きていて。
魔王から離反し、戦っている。
それは自らが生きるため。
今はリナさん達と行動しているから敵対してしまったが、もし───。
もし仮に、私がリナさん達と出会っていなかったら。
私は魔竜王と敵対する事はなかっただろう。
魔竜王の目的はあくまで冥王の計画を潰すため、その一端を担っているリナさんを殺す事。
全く……つくづく面倒に巻き込まれる。
それは果たして決められた事なのか。
それとも知らず知らず、自らが面倒事に飛び込んでいるのか。
詮なき事を考えつつ、私は一つ決意した。
「ユウ……?」
それを見ていたリナさんが、不安げな声をあげる。
それはそうだろう。
敵対している相手を前に、笑う私を不審に思わないはずが無い。
私はリナさんに視線を合わせると、小さく微笑み彼女に告げる。
「ごめんなさい、リナさん。私、彼とは戦えないです」
───それが私の答え。
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