「手に入らねーくらいなら、いっそ死んでもらうぜっ!」
更に襲い来た、衝撃波と化した『気』に吹き飛ばされそうになり、私は慌てて体勢を立て直す。
杖を前にかざし、魔竜王を見据え、足に力を入れて。
「全く、勝手ですね……」
「お前には言われたくねぇがなっ!」
言ったと同時に放たれる魔力球。
そう言えば、前に『彼』が言ってたっけ。
魔竜王は短気だって。
「ユウっ!?」
強風でコチラに近付けずにいるリナさんが、私の名を呼ぶ。
呪文を紡ぎ、攻撃を防ぎきった私は魔竜王に注意を向けたままリナさんにチラリと視線を走らせた。
見ればそこには心配そうな表情が浮かんでいて、つくづくお人よしだな、と私は苦笑する。
敵を前に不参戦表明するような私を心配するなんて。
そして今なお、攻撃されても反撃せずにいると言うのに。
私の我が儘でしかないのに。
「───リナさん」
私は再び魔竜王を見据えながら、リナさんに話し掛ける。
「異界黙示録の知識を得たリナさんなら分かるでしょうけど、『彼女』はとても危険です」
「っ!?」
「でも、使い方次第では比類なき程の術にもなります」
言う内にも風でジリジリと後ろに押しやられる。
私は前屈みになって地を踏み締め、
「おそらく、あの闇の刃なら……」
「ぇ?」
闇をも切り裂く神滅斬なら……。
そしてリナさんなら活路を見出だせるだろう。
「おしゃべりは済んだか?」
「ふふっ、女の子のおしゃべりは尽きないんですよ」
「ちっ、口の減らないお嬢ちゃんだ」
舌打ちしつつ、魔竜王は剣を肩に担いだ。
どうやらそろそろ本気でマズイ事態になってきたらしい……。
プレッシャーから背筋に嫌な汗が流れた。
けれど、そんな様子はおくびにも出さず私は言う。
「よく怒られます。軽口をたたくなって」
「それが賢明だな」
「でも、それが私です」
「だがそれもココまでだ」
チャキッ……と私に剣を突き付け、魔竜王は嘲笑う。
それに対し、私は微笑んだ。
私の『意志』は弱いけど、『意思』が無い訳じゃない。
「そうはさせません。私が私を殺させない」
「あ?」
「アクアさん、ミルガズィアさん。リナさんをお願いしますね」
訝る魔竜王を前に私は皆を笑顔で振り返り───そして。
「御武運を……リナさん」
言って私は、たんっ!と後ろへ地を蹴った。
生き残る為に。
───……生きる為に。
あとがき
わがまま。
それはコウモリの願い。
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