(3/5)

「ゼロスはしばらく現れんぞ。こことは別の空間で撒いてやったからな」



絶対の確信。

絶対の余裕。

しかし、セイグラムはあたしを───人間を見くびり過ぎている。



「さて貴様ら、ゆっくり始末してやる」



その台詞。

嫌と言うほど後悔させてやる。

あたしは神経を研ぎ澄まし───そして。

その呪文を口にした。







───悪夢の王の一片(ひとかけ)

世界(そら)のいましめ解き放たれし

凍れる黒き虚無(うつろ)の刃よ

我が力 我が身となりて

共に滅びの道を歩まん

神々の魂すらも打ち砕き───





神滅斬(ラグナ・ブレード)!」



呼び掛けに応え、あたしの手の中に虚無の刃が生まれた。

黒い刀身はセイルーンの時の様に暴走せず、ちゃんと手の中に収まっている。



───今なら。



今なら使いこなせる。

異界黙示録(クレアバイブル)であの『魔王』の事を知った今なら……。



「そ、その魔法はっ!? その魔法はっ!!」



あたしの手にしたそれを目にして、セイグラムに動揺が走った。



「これが完璧な神滅斬(ラグナ・ブレード)よっ!」



あたしは一気にセイグラムに駆け寄り、刃を振りかぶる。

───その瞬間。



ざんっ!



虚空から現れた一本の黒い(きり)が、セイグラムの体を(つらぬ)いた。



「ぐあぁああああっ!?」

「アレでわたしから逃げたつもりですか? セイグラムさん」

「ゼロスかっ!」

「てぇやぁあっ!!」



悲鳴を上げ、後ろに気を取られたセイグラムに、あたしは迷う事なく刃を振り下ろす。



「ぐがあぁあああああっ!!」



闇の刃は何の抵抗も無くセイグラムの身体を切り裂き───そして。

それが、セイグラムの最期だった。





絶叫がこだまし、セイグラムの姿は四散する。

砂や灰のように風に流され溶けていくその様を見ながら、あたしは闇の刃を虚無へと帰し、その場にがくりと膝をついた。

それ程までに、完璧な神滅斬(ラグナ・ブレード)は体力と精神力を奪う代物だった。



「はぁっ……はぁっ……」



肩で息をし、荒くなった呼吸を整えながら、あたしは、いつもの笑顔を浮かべ悠然と佇むゼロスを見上げる。



「……ゼロス」



そこに響くあたしを呼ぶガウリイの声。



「リナぁーっ!」



心配して駆け寄って来るガウリイをそのままに、あたしはゼロスを睨み付けながら立ち上がった。



「余計な事を……」



あんな奴、あたしの力で……。

そんな思いを知ってか知らずか。

ゼロスは明るく笑って、あたしに言う。



「いやぁ、なかなかお見事でした───……ところで」

「何よ?」



悪態つくあたしを気にも留めず、しかしさっきと一転。

今度は不思議そうな顔をして、



「ユウさんの姿が見えませんが?」



そう、あたしに、言った。

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