「ゼロスはしばらく現れんぞ。こことは別の空間で撒いてやったからな」
絶対の確信。
絶対の余裕。
しかし、セイグラムはあたしを───人間を見くびり過ぎている。
「さて貴様ら、ゆっくり始末してやる」
その台詞。
嫌と言うほど後悔させてやる。
あたしは神経を研ぎ澄まし───そして。
その呪文を口にした。
───悪夢の王の一片よ
世界のいましめ解き放たれし
凍れる黒き虚無の刃よ
我が力 我が身となりて
共に滅びの道を歩まん
神々の魂すらも打ち砕き───
「神滅斬!」
呼び掛けに応え、あたしの手の中に虚無の刃が生まれた。
黒い刀身はセイルーンの時の様に暴走せず、ちゃんと手の中に収まっている。
───今なら。
今なら使いこなせる。
異界黙示録であの『魔王』の事を知った今なら……。
「そ、その魔法はっ!? その魔法はっ!!」
あたしの手にしたそれを目にして、セイグラムに動揺が走った。
「これが完璧な神滅斬よっ!」
あたしは一気にセイグラムに駆け寄り、刃を振りかぶる。
───その瞬間。
ざんっ!
虚空から現れた一本の黒い錐が、セイグラムの体を貫いた。
「ぐあぁああああっ!?」
「アレでわたしから逃げたつもりですか? セイグラムさん」
「ゼロスかっ!」
「てぇやぁあっ!!」
悲鳴を上げ、後ろに気を取られたセイグラムに、あたしは迷う事なく刃を振り下ろす。
「ぐがあぁあああああっ!!」
闇の刃は何の抵抗も無くセイグラムの身体を切り裂き───そして。
それが、セイグラムの最期だった。
絶叫がこだまし、セイグラムの姿は四散する。
砂や灰のように風に流され溶けていくその様を見ながら、あたしは闇の刃を虚無へと帰し、その場にがくりと膝をついた。
それ程までに、完璧な神滅斬は体力と精神力を奪う代物だった。
「はぁっ……はぁっ……」
肩で息をし、荒くなった呼吸を整えながら、あたしは、いつもの笑顔を浮かべ悠然と佇むゼロスを見上げる。
「……ゼロス」
そこに響くあたしを呼ぶガウリイの声。
「リナぁーっ!」
心配して駆け寄って来るガウリイをそのままに、あたしはゼロスを睨み付けながら立ち上がった。
「余計な事を……」
あんな奴、あたしの力で……。
そんな思いを知ってか知らずか。
ゼロスは明るく笑って、あたしに言う。
「いやぁ、なかなかお見事でした───……ところで」
「何よ?」
悪態つくあたしを気にも留めず、しかしさっきと一転。
今度は不思議そうな顔をして、
「ユウさんの姿が見えませんが?」
そう、あたしに、言った。
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