フクイン(1/4)

───早く。

早く、早く、早く!

中々回復しない体力に、気だけが焦り、動かぬ身体に苛立ちを覚える。

戦況はどう贔屓目に見ても不利だった。

力の差は歴然で、ゼルの崩霊裂(ラ・ティルト)を簡単に防ぎ、ガウリイの光の剣の攻撃もものともせず、ガーヴは笑みさえ浮かべて二人の相手をしている。

しかし、それすらも長くは続かなかった。



「ふっ、人間風情にしては良く頑張った方だ。結構楽しかったぜ」



ガーヴはそう言って気を放出すると、ガウリイとゼルを吹き飛ばしたのだ。



『ぐぁっ!!』

「ガウリイっ! ゼルっ!!」



岩壁にたたき付けられ呻く二人の前に、悠然と立ちはだかるガーヴ。

あたしは傷だらけで動けない二人の名を呼び───その瞬間。



覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!」



突如響いた声。

ガーヴを中心に五紡星が描かれ雷が(ほとばし)る。

が、それも数瞬。

ガーヴが「はっ!」と掛け声をかけると、パリン……とガラスが割れるような音がして、術は防がれた。



「誰だっ!?」



声のした方を振り向くガーヴ。

その先には、岩の上にすっくと佇むアメリアの姿があった。



「貴方にいかに巨大な力があろうとも、諦めず、全力を尽くす事を怠らなければ、正義は必ず勝つ!!」

「アメリア……」

「いつの間に復活したんだ」

「……心配させやがって」



ガウリイとゼルが彼女の姿を見て、安堵の表情を浮かべる。

それはあたしも同じで。

いつもと同様のアメリアの姿にホッと胸を撫で下ろした。

───しかし。



「アメリア、何調子にのって……ごほっ」



呟いた途端に咳込んでしまい、あたしはその場にうずくまる。

と、その時。

ジャリッと地を踏む音にそちらを見上げれば、今までアメリアの治療をしていたミルガズィアさんの姿があった。



「待たせたな。さて、次はお前を治してやろう」

「……え?」

「もう少しの我慢だ。遅れて悪かったが、あちらの娘の方が危険な状態だったからな」

「ミルガズィアさん……」



彼はあたしの側に屈むと、そっと手を添え、治療をしてくれる。

彼のお陰で、ぐんぐん体力が回復していくのが分かる。

そんな中、聞こえてきたのはアメリアの正義の口上だった。



「正義の使命をこの身に背負い、わたしがこうして復活した今、貴方の好きにはさせないわっ! 我が身の都合に周りを巻き込み、この世を混乱させるとは、その悪の報いを今こそ受ける時! 覚悟しなさいっ!!」



ビシッ!と決めポーズまでつけて朗々と語るアメリア。

そんなアメリアの言葉にガーヴは嘲笑を浮かべ、彼女に問う。



「はっ、笑わせるなよ。なら聞くが、混乱の源になるであろう冥王(ヘルマスター)の計画に、踊らされてると知りつつ従ったリナとか言う、お前の仲間も悪人か!?」

「うっ……そ、それは……その……」

「なら当然その仲間のお前も悪人かよ?」

「わたしが悪人っ!? いや、でもだからそれは……その……」



自らを正義と信じて疑わないアメリアに、その言葉は絶大なる効果を発揮した。



「おい、アメリアが悩みだしたぞ」

「まずい」

「むやみに正義なんぞを振りかざす奴は嫌いでな」



敵を前に頭を抱えているアメリア。

それを見てガーヴが小馬鹿にしたように嘲笑う。

───そして。



「消えてもらうぜ」

「っ!?」



ガーヴの姿が掻き消えたと同時に、次の瞬間にはアメリアの後ろに出現していた。



「ラ・ティ……」

「遅い!」



慌てて後ろを振り向き術を唱えるアメリア。

だが、ガーヴの攻撃の方が早い!



「うおぉおおおっ!!」



それを見たゼルは咄嗟にアメリアをかばい───そして。

無情にも、剣は振り下ろされた。

<<>>
[ 戻る ]


ALICE+