───早く。
早く、早く、早く!
中々回復しない体力に、気だけが焦り、動かぬ身体に苛立ちを覚える。
戦況はどう贔屓目に見ても不利だった。
力の差は歴然で、ゼルの崩霊裂を簡単に防ぎ、ガウリイの光の剣の攻撃もものともせず、ガーヴは笑みさえ浮かべて二人の相手をしている。
しかし、それすらも長くは続かなかった。
「ふっ、人間風情にしては良く頑張った方だ。結構楽しかったぜ」
ガーヴはそう言って気を放出すると、ガウリイとゼルを吹き飛ばしたのだ。
『ぐぁっ!!』
「ガウリイっ! ゼルっ!!」
岩壁にたたき付けられ呻く二人の前に、悠然と立ちはだかるガーヴ。
あたしは傷だらけで動けない二人の名を呼び───その瞬間。
「覇王雷撃陣!」
突如響いた声。
ガーヴを中心に五紡星が描かれ雷が迸る。
が、それも数瞬。
ガーヴが「はっ!」と掛け声をかけると、パリン……とガラスが割れるような音がして、術は防がれた。
「誰だっ!?」
声のした方を振り向くガーヴ。
その先には、岩の上にすっくと佇むアメリアの姿があった。
「貴方にいかに巨大な力があろうとも、諦めず、全力を尽くす事を怠らなければ、正義は必ず勝つ!!」
「アメリア……」
「いつの間に復活したんだ」
「……心配させやがって」
ガウリイとゼルが彼女の姿を見て、安堵の表情を浮かべる。
それはあたしも同じで。
いつもと同様のアメリアの姿にホッと胸を撫で下ろした。
───しかし。
「アメリア、何調子にのって……ごほっ」
呟いた途端に咳込んでしまい、あたしはその場にうずくまる。
と、その時。
ジャリッと地を踏む音にそちらを見上げれば、今までアメリアの治療をしていたミルガズィアさんの姿があった。
「待たせたな。さて、次はお前を治してやろう」
「……え?」
「もう少しの我慢だ。遅れて悪かったが、あちらの娘の方が危険な状態だったからな」
「ミルガズィアさん……」
彼はあたしの側に屈むと、そっと手を添え、治療をしてくれる。
彼のお陰で、ぐんぐん体力が回復していくのが分かる。
そんな中、聞こえてきたのはアメリアの正義の口上だった。
「正義の使命をこの身に背負い、わたしがこうして復活した今、貴方の好きにはさせないわっ! 我が身の都合に周りを巻き込み、この世を混乱させるとは、その悪の報いを今こそ受ける時! 覚悟しなさいっ!!」
ビシッ!と決めポーズまでつけて朗々と語るアメリア。
そんなアメリアの言葉にガーヴは嘲笑を浮かべ、彼女に問う。
「はっ、笑わせるなよ。なら聞くが、混乱の源になるであろう冥王の計画に、踊らされてると知りつつ従ったリナとか言う、お前の仲間も悪人か!?」
「うっ……そ、それは……その……」
「なら当然その仲間のお前も悪人かよ?」
「わたしが悪人っ!? いや、でもだからそれは……その……」
自らを正義と信じて疑わないアメリアに、その言葉は絶大なる効果を発揮した。
「おい、アメリアが悩みだしたぞ」
「まずい」
「むやみに正義なんぞを振りかざす奴は嫌いでな」
敵を前に頭を抱えているアメリア。
それを見てガーヴが小馬鹿にしたように嘲笑う。
───そして。
「消えてもらうぜ」
「っ!?」
ガーヴの姿が掻き消えたと同時に、次の瞬間にはアメリアの後ろに出現していた。
「ラ・ティ……」
「遅い!」
慌てて後ろを振り向き術を唱えるアメリア。
だが、ガーヴの攻撃の方が早い!
「うおぉおおおっ!!」
それを見たゼルは咄嗟にアメリアをかばい───そして。
無情にも、剣は振り下ろされた。
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