見るとリナさんは眉をつり上げ、一冊の本をゼロスに向かって突き出していた。
「どうしたんですか?」
「どーしたもこーしたも無いわよっ!! コレのどこが写本な訳っ!?」
怒りの収まらないリナさんから古めかしい本を受け取り、表紙を捲る。
そこにはお世辞にも綺麗とは言えない字で次の事が書かれていた。
皆で協力してこそ、教会を守り続ける意味がある。
By神官長。
『………………』
「こんな事の為に散々苦労させられてっ!! どう責任とってくれるのよゼロスッ!?」
「いやぁ、僕も大切な書物が保管されてるとしか知りませんでしたし」
「確かな情報もないままにあたし達を巻き込むなーーーっ!!」
息巻くリナさんに、ゼロスは笑顔で後退る。
どうやらいつもの調子が戻ったらしい。
そして、アメリアさん達はリナさんを落ち着かせようと、四苦八苦している。
関わりあいたくない私は何とはなしに本を捲り、最後のページに神官長が残した文を見つけた。
そこにはこの本を残した理由が書かれていた。
この教会は四つの神を祀っている事で、それぞれの神官達の間で喧嘩が絶えなかったらしい。
そこで神官長が隠し通路の奥に書物を置き、皆で力を合わせるように仕向けた。
それで宝珠やら罠を沢山仕掛けたみたいなのだが……。
結局、神官達は力を合わせる事はなく、本が在ることだけが語り継がれ教会は寂れてしまった。
蓋を開けてみれば何とも馬鹿らしい話である。
私はパタンと静かに本を閉じ、再び台座の上へと戻した。
後ろでは未だに怒りが収まらないリナさんが、誰かれ構わず当たり散らしている。
触らぬ神に祟り無し。
私はこちらに被害が及ぶ前に退散しようと思ったのだが……。
「ユウさぁん、何とかしてください」
「おれ達の手には負えん」
「何とかならないか?」
既に手遅れだった。
「何とかって言われましても……」
私は額に汗し、困り顔のガウリイさん達を見る。
「付き合いの長いガウリイさん達に出来ない事が私に出来るとも思えませんが……」
「大丈夫ですっ!!」
「……何を根拠に」
「あの、何を考えてるんだかさっぱり解らない、ともすればいつも『秘密です』と怪しい笑顔のゼロスさんと一緒に居ることが出来たんですもん!」
「いや……あの……」
……一緒に居たと言うか、一緒に居させられたと言う方が正しいと思うんだけど。
しかし。
そう反論しようとする私の言葉を遮り、アメリアさんは続ける。
「リナさんの怒りを鎮めるのなんて朝飯前ですよっ!! ダメだったらダメだった時の事! その時考えましょう!!」
怒りを鎮めるって……リナさんは荒ぶる神ですか。
まぁ破壊神と言えばそれっぽいけど。
アメリアさんの言葉に内心突っ込みを入れつつ、私はもう一度リナさんの方を見た。
彼女はゼロスに詰め寄り、慰謝料がどうのと言っている。
「仕方ないですねぇ……」
このままココに居る訳にもいかないし。
私は一つ溜め息を吐くと、リナさんの方へ歩みを進めた。
何か貧乏クジを引いた気分……と思いながら。
あとがき
生け贄=貧乏クジ。
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