数瞬後。
しゃらん……。
と、マントの裾に連なっていた飾りが音をたてた。
その音に反応したかのように、周りに張ってあった結界が破れ、風が、光が、音が。
視覚、聴覚を刺激する。
「……っ」
暗闇から一転した視界。
いきなり太陽の下に出現した私は、眩しさに目を細めた。
───そして。
「ユウっ!?」
「ユウさんっ!」
呼びかけられた私の名。
それはリナさん達が上げたものだった。
光に慣れぬ目を眇めつつ、そちらを見遣れば無事な姿のリナさんが見て取れる。
その事にホッとし、肩の力を抜いたのも束の間。
「お姉ちゃん……!?」
「何でテメェがっ!?」
後ろからの聞き覚えのある声に振り向けば、そこにはやはり思った通りの人たち。
赤毛の男に、少女と見間違える程の美少年。
魔竜王と、ここまでの地図を描いてくれた少年がそこに居た。
───……が、しかし。
魔竜王は分かるにしても、何故ココに少年が……?
それに、魔竜王が少年の前で膝をついていることも気になる。
……もしかして面倒な事になっているのだろうか?
「……お邪魔……だったかな……」
言って困り顔で少年を見ると、彼はニッコリと笑い、
「そんなこと無いよ、お姉ちゃん。むしろ大歓迎さ」
と、両手を広げてみせる。
だが、その事がかえって嫌な予感を増長させた。
楽しそうな声。
愉快でたまらないという顔。
笑っているのに笑っていない瞳。
───と、次の瞬間。
「うおぉぉぉっ!」
魔竜王が雄叫びを上げ、少年へと襲いかかった。
「危ないっ!!」
そう反射的に叫んだ私の声に反応し、少年は緩慢ともいえる動作で魔竜王へと向き直り、ポツリと呟いた。
「あぁ、忘れてたよ」
……と。
魔竜王に襲い掛かられるのが、何でも無い事の様に。
彼は何食わぬ顔でパチンと指を鳴らす。
「じゃあね、ガーヴ」
笑顔を向けたまま。
そして指を鳴らした、たったそれだけの事で。
その一瞬にも満たない一刹那で。
魔竜王は、
この世界から姿を消した。
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