「そ、そんな……」
「リナさんの神滅斬さえ通じなかった相手が一瞬の内に……」
呆気ない……。
あまりにも呆気なさ過ぎる魔竜王の最後に、ゼルガディスさんやアメリアさんが呆然と呟く。
対してリナさんは少年に向かって、吐き捨てる様に言った。
「これでアンタの計画通りって訳ね!」
「ま、大体ね。僕がリナ=インバースを使って何か企んでる……そうガーヴの部下に情報を流した。それが最初さ」
悪戯が成功した時の様な表情を浮かべ少年は言う。
そしてその言葉から、彼が───彼こそが。
事の発端、裏で糸を引いていた黒幕。
冥王フィブリゾだということが窺えた。
「で、ゼロスをあたしに宛がい、散々引っ張り回してガーヴの計画を叩き潰しさせたあげく……」
「後からのこのこ出て来たガーヴを自分の手で始末する……か」
リナさんの言葉に、ゼルガディスさんが面白くなさそうに眉間にシワを寄せる。
その表情には忌々しいと言う思いが、滲み出ていた。
まぁ、それも無理は無い。
ただでさえ良く思っていないゼロスに、良いように手の平の上で転がされていたと聞かされれば、不機嫌にもなると言うもの。
「結構楽な仕事してるわね」
「まぁね」
「ぇ……あの、えーと……」
「つまり、こいつは魔族を裏切ったガーヴをおびき出す餌として、あたしを利用したって訳!」
相変わらず話についていけてないガウリイさんに、リナさんが簡単に説明を施すと、少年───冥王は満足そうに頷いた。
「そう、それが一つ」
「一つ?」
「まぁだ何かあるってぇのか?」
「あれ? もう気が付いてると思ったけど? 真の異界黙示録に触れたリナ=インバースなら」
「っ!?」
訝しげな声を上げるアメリアさんとゼルガディスさんに、冥王は意外とでも言いたそうな表情で続ける。
その言葉に、息を飲むリナさん。
それは取りも直さず、その言葉の肯定を意味していた。
「それからユウお姉ちゃんだっけ?」
「………………」
呼び掛けられ、私は顔だけは可愛らしい少年へと目を向ける。
そこには相も変わらず楽しそうな笑顔があった。
「お姉ちゃんも異界黙示録を見たんでしょ? それなら分かるよね?」
何の事です?
そう口にしようとした───その途端。
私の視界は、ぐらりと歪み、それを追うように直ぐさま脱力感が襲い来た。
「……っ!!」
胸元を握り締め、何とか意識を保つ。
……が、それも時間の問題だろう。
「世界を滅ぼし、全てを滅ぼし、そして混沌へと帰る。我らが魔族、究極の目的の為、どうしても君の協力が必要なのさ、リナ=インバース」
誇らしげに語る冥王。
そう、全ての魔族は。
滅ぼし、滅びる為に存在している。
何ともはた迷惑な目的。
そんなことを思ってる内にも、私の意識は段々と遠退き始めていた。
「ガーヴとの戦い……切り札………くれる………ちょっと期待……ど……ガッカリ……」
もはや、私には冥王が何を言っているのか理解出来ない。
ある程度覚悟していたとはいえ、これ程とは……。
……やっぱり、無謀……だったかも……。
「…………ふふっ」
……またゼロスに……怒られちゃうかな……。
……怒って……くれるかな。
私、ゼロスに怒られるの……嫌いじゃないんだ……。
一人で小さく笑い、その瞬間。
身体から力が抜け、私はガクッと地に膝をついた。
近くで誰かが私を呼んだような気がする。
大丈夫───そう伝えようと顔を上げ、その時初めて私は気付いた。
「……あ……れ?」
リナさんは居る。
ガウリイさんも居る。
ゼルガディスさんも、アメリアさんも居るのに。
でも───。
ゼロスは……?
「ぜろ……す?」
居ない。
彼が居ない。
あの笑顔が無い。
なんで。
なんで。
「なん、で……?」
しかし。
その疑問が晴れる事なく、
私の視界は暗転した……───。
あとがき
心から。
心から。
───……「××××」。
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