ちゅどぉぉん!
街道を行く道すがら。
「火炎球!」
どごぉぉぉん!
リナさんの声が響くとほぼ同時に、辺りに轟くのは紛れも無く爆音だった。
「ガウリイさんの事でストレス溜まってるのは分かりますけど……」
次々に上がる火柱を見て、アメリアさんが呆れたように呟く。
それ程までに、彼女のストレス発散方法は凄まじかった。
盗賊の皆さんに手加減なしの攻撃呪文を連続で叩き込み、金品を強奪するリナさん。
その姿は嬉々としているものの、やはりどこかが不自然で。
「おっ宝〜おっ宝〜♪」
「お前なぁ……」
「乙女心の特効薬! サイラーグに着く前に、ストレスでダウンしちゃガウリイを助けるどころじゃないでしょう?」
そう言うと彼女は足どり軽く歩き始めた。
まるで何かを振り切るように。
何かを忘れるかのように。
そんなリナさんの背中を見て、私は祈る。
この旅の無事を───。
『ガウリイを助けるどころじゃない』
それはとどのつまり、今この場所にガウリイさんが居ないことを示していた。
アメリアさん達に聞いた話によると、私が倒れた後にガウリイさんは冥王の手によって連れ去られてしまったのだそうだ。
リナさんをサイラーグへとおびき寄せる為に。
おそらくは、サイラーグで彼女に『ある事』をさせる為に。
人質として。
そして───今朝。
彼女は一人でサイラーグに向かうと言い出した。
冥王の目的は自分だからと。
皆を巻き込まない為に。
だが、それでアメリアさん達が納得するはずもない。
私としても、「はいそうですか、さようなら」とはいかない。
いくら私が面倒くさがりと言っても、それくらいは心得ている。
───結局。
皆の説得にリナさんが折れ、今は冥王から招待を受けたサイラーグへと向かっている……のだけれど。
「あいつら盗っ人よ? これでちょっとはコリたでしょ」
「コリきってると思います……」
ガウリイさんの事で相当ストレスが溜まっているのか、いつもより容赦ない盗賊イジメ。
普段なら一緒に『悪者退治』をしているアメリアさんですら、その様子を見て疲れた様に呟いた。
と、その時。
ガサガサっと、近くの茂みが揺れ動く。
「うんにゃ、まだコリきってないのが居るみたいね」
ギロリと眼を光らせ、そうかと思うとリナさんは茂みに向かって術を解き放った。
「爆煙舞! もういっちょ!」
続けざまに術を唱えるリナさん。
すると茂みから降参を示す白旗が上がり───しかし。
「ダーメ!」
リナさんがそれを許すはずもなく、茂みに向かって再度術が投げ込まれた。
どがぁん!
「きゃっ!!」
爆風に、白旗を上げた人物は声を上げて宙を舞うと、ポテリ……と地に落ちる。
降ってきたのは長い黒髪の、法衣をまとった二十歳くらいの女性。
「あ、あんた……!?」
それを見たリナさんは驚きで目をパチクリと瞬かせた。
どうやら知り合いのようだが……。
「リナさん、アメリアさん、ゼルガディスさん……お久しぶりです」
「シルフィール!」
「シルフィールさん!」
「白旗……見えませんでした? あは……あはははは……」
言って彼女は笑いながら、ぱたむと力無く倒れたのだった。
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