「そうでしたか……」
倒れたシルフィールさんを介抱した後。
気づいた彼女に今までの経緯を説明すると、シルフィールさんは落ち着いた様子で、そう相槌を打った。
「ま、何も聞かなかった事にして、このまま叔父さんの所に帰るのが一番だと思うわよ」
リナさんはあえて気楽な口調で提案するも、シルフィールさんは真っ直ぐな瞳でリナさんを見詰めて言う。
「つまり、ガウリイ様はリナさんをサイラーグへと呼び寄せる為に連れていかれたのですね」
「ま、まぁ……そういう事だけど」
歯に衣着せぬ物言いに、たじろぐリナさん。
シルフィールさん───おっとりしているようでその実、ことガウリイさんに関しては随分と熱い人らしい。
この短い間でも、その事が充分に窺えた。
そんな彼女はうつ向きがちに話し始める。
「実は、わたくしもサイラーグへ行く途中だったんです」
「さ、サイラーグへ?」
「旅の人からおかしな話を聞いたんです。サイラーグを通ったら、あの樹が無くなっていたそうなんです」
「あのどデカイ樹が!?」
「無くなったって、折れたとか切り倒されたって事ですか?」
アメリアさんの質問に、シルフィールさんはゆっくりと頭を振った。
「いいえ、文字通り無くなったそうです。しかもサイラーグには町があると言うんです」
「町が?」
その言葉に、不審がるリナさん。
私はそれに対し首を傾げた。
「あの……町に町があっても不思議じゃないと思うんですけど」
「ぅ゛」
至ってごく普通の素朴な疑問を投げ掛ける私。
すると、何故かリナさんは面白いくらいに固まった。
額に汗を流しながら。
まるで悪戯がばれた子供の様に。
「いや……それは……」
「ユウは知らんのか?」
「は?」
「あの町は半年ほど前に壊滅したんだ」
「……………………」
壊滅。
それはまぁ、なんとも不憫な話で…………ん?
今のリナさんの様子って、もしかして……。
「まさか、リナさんが滅ぼしちゃったんですかっ!?」
ぎくぅっ!
尋ねた瞬間、そう表現するのが適切なくらい、リナさんの肩は大きく揺れた。
何と言うか……。
「やっちゃったんですね……」
「あ、アレはあたしがやったんじゃなくて、コピーレゾがやったのよ!!」
「……レゾ?」
レゾと言えば確か、千年以上前に五大賢者に数えられた盲目の聖人のはず。
…………あ、いや。
私の居た時代で千年前と言うことは、今が丁度その時代と言うことか。
そう言えば、サイラーグの事も本で読んだ事があったな……。
千百年前、人の手が造り出した不完全な生体魔律装甲ザナッファーの暴走に寄って壊滅。
その時、光の剣を持った戦士が魔獣ザナッファーを滅ぼし、その百年後。
町が復興してきた所で今度は謎の壊滅。
「それがリナさんの所為だった訳ですね」
「だからあたしじゃないってば!!」
「とにかく、コピーレゾとの戦いで壊滅した町が元通りになっていたと言うんだな?」
「えぇ……おそらく、冥王はガウリイ様を人質にして、リナさんに何か仕掛けるつもりでは?」
「おそらくね。でもだからって、行かない訳にもいかないでしょ」
言ってリナさんは、明るく笑う。
そこに迷いはなかった。
「となればガウリイ様の為、武力、お金、お色気! あらゆる手段を使って冥王を出し抜き、ガウリイ様をお助けするしかありません!」
「冥王に金や色気って……」
「行きましょうリナさん! サイラーグへ!!」
んー、これは……。
「止めても無駄みたいね」
「ですね」
息巻くシルフィールさんを尻目に、私達は知らず知らず溜息を吐いていた。
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