「彼を倒すには普通の手じゃ無理だよ」
……なるほど。
暇つぶしみたいな事を言っておきながら、実はそれが狙いか。
「彼にもそろそろ本気になってもらうよ」
思う内にも剣士の周りに黒いオーラが立ち込め、冥王は面白くて仕方ないという風に笑い出した。
「ふっふっふっふっ……はっはっはっはっ!」
しかし、今は冥王に構っている場合じゃない。
「皆、走って!」
リナさんの掛け声に、私達は駆け出した。
剣士から離れるように。
「もう嫌ーっ!!」
そう叫びながらも一番前を走るマルチナさん。
そんな中で私の隣を走っていたリナさんが、視線で合図を送ってきた。
交わしたのは数瞬。
彼女の意図を察して、私はリナさんと同じ呪文を唱え始める。
『我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを! 竜破斬!!』
二人同時に、振り向き様に解き放ったそれは、赫い光を収束しながら剣士に向かって突き進む。
剣士はそれを真っ正面から受け、そして。
「光の剣で吸収したっ!?」
先程まで白い光を携えていた剣は、今、赤い刃と化し輝いていた。
剣士はそのまま剣を振り上げ……───。
どがごおおぉぉぉぉおんっ!!
先程とは比べものにならない程の爆発。
私達は堪らず地に伏した。
いや、伏せざるを得なかった。
「……っ」
身体のあちこちが痛みを訴えている。
爆発の所為で頭がクラクラし、爆音の所為で耳が聞こえない。
……どうせなら、このまま死んだフリでもしていたい所だけど。
でも、そうも言ってられない。
私は怠けようとする思考を叱咤し、痛む身体を押し殺して起き上がる。
未だハッキリしない頭を振りつつ見上げた先───。
そこに、剣士とリナさんの姿があった。
男は剣を振り上げ、動けぬリナさんを見据えている。
今にも振り下ろされそうな光の剣。
───しかし。
剣はなかなか振り下ろされない。
それを見て、私には彼が迷っているように感じられた。
何をと聞かれても答えることは出来ないが、それでも彼は何かに戸惑っている。
そうこうする内に、ついに男は苦しみだした。
頭を抱え、苦痛の声を上げる。
まるで何かに抵抗しているかのように。
反発するかのように。
けれど、それも長くは続かなかった。
苦しみから逃れるように、彼は再び光の剣を振り上げる。
剣士は、今度は迷わなかった。
迷わず、それを。
剣を───振り下ろした。
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