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「っ!!」



最悪のシナリオが脳裏を過り、息を呑む。

───が。

振り下ろされた剣の先。

そこにリナさんの姿は無かった。



「ぇっ!?」



戸惑いつつも慌てて視線を巡らせれば、リナさんは一人の男の人に抱えられ、剣士から離れた場所にいた。

波打つ黒髪を後ろで束ね、深草色のくたびれた山高帽子、それと同色のマントを身に纏ったその人の腕の中で、リナさんが驚きの声を上げる。



「あ、あんた!」

「相変わらず厄介なことに首を突っ込んでいるようだな」



男の人はリナさんをその場に下ろし、ニヒルな笑みを浮かべた。



「あいつ!」

「ザングルスさん!」

「お知り合い……ですか?」

「えっと、まぁ……知り合いというか何と言うか」



アメリアさんが困ったように苦笑する。

どうやらあまり歓迎できる相手ではないようだが……。



「何故ここに!?」



リナさんは驚きを隠さぬまま、彼───ザングルスさんへと問い掛けた。

けれど、彼はそれには答えず、逆に彼女に尋ねる。



「ガウリイはどこだ?」

「え? あ、あんた、もしかしてずっとガウリイの後を……?」

「ほっとけ」



リナさんの言葉に、ザングルスさんは頬を染め、恥ずかしそうにそっぽを向いた。

…………いや、何故そこで赤くなる。

というか、この話の流れからすると……もしかして。



「彼、実はガウリイさんのストーカーだったりします?」

「……まぁ……似たようなもの……なんですかね?」

「奴はガウリイに剣で勝ちたいと勝負を挑み続けてるんだ」

「それでガウリイさんの後を追っ掛け回してるんです」

「……それは、まぁ……」



なんとも。

ガウリイさんて、色んな意味でモテるんだなぁ。

コチラでそんな話をしてる内に、リナさん達は剣士を見据えながら話を進めていた。



「そうね。ガウリイは居ないけど、あんたに相応しい凄腕の剣士よ。しかもガウリイの光の剣つき」

「らしいな」



ザングルスさんは剣を手にすると、剣士と真正面から対峙した。

彼としては強い者と戦えればそれでいいらしい。



「ハウリング・ソード、パートUッ!」



ザングルスさんが技の名前と思われるものを叫ぶと、彼の手にした剣が黒い光を帯びた。

そして迷いなく、一足飛びで剣士へと間合いを詰める。

流石ガウリイさんに挑戦し続けているだけはあるのか、その動きはまるで隙が無い。

そのまま二人は斬り結び───剣士の動きが止まったその瞬間。



「ザングルス、下がって!」



リナさんの声に反応し、ザングルスさんは素早く剣士から離れた。



「神々の魂すらも打ち砕き───……神滅斬(ラグナ・ブレード)っ!」



自らの手の内に闇の刃を具現化させ、リナさんはすかさずそこに一撃を仕掛ける。



「てぇやぁぁぁあっ!!」



光と闇が交差する。

力と力がせめぎ合い、その瞬間。

リナさんと剣士の間で爆発が起こった。

離れていた私達は無事だったが、爆発の中心にいた二人はただでは済まない。

リナさんは地面へと叩きつけられ、剣士は岩へと背を打ち付けていた。

次に備え、私達は直ぐさまリナさんの元へと駆け寄る。

そこにザングルスさんの声が響いた。



「見ろっ! 仮面が!!」



皆の視線が剣士のそれへと集中した。

仮面は小さな音をたててヒビ割れていく。



───やがて。



パキンっと乾いた音と共に仮面が砕け散り、青空の元、その素顔が晒された。





仮面に収められていた金の髪がパサリと落ちる。

青い瞳が驚きに見開かれている。

───それは。

その姿は紛れもなく……。



「……そ……そんな……」

「ガウリイっ!?」

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