「そ、そんな……」
「馬鹿な!」
信じられない思いで、目の前にいるガウリイさんを見つめる私達。
そんな中、シルフィールさんがガウリイさんの元へと駆け出した。
「ガウリイ様っ!!」
「駄目よ、シルフィール!」
「あ、リナさん……!?」
「完全に操られてるわ、フィブリゾに」
「その通りだよ」
リナさんの言葉に、答えたのは冥王本人だった。
そして、それが何でも無い事のように。
大したことが無いとでも言うように、冥王は続ける。
「今この男の意識は完全にぼくがコントロールしてるのさ」
「貴様っ!」
「この男は思わぬ拾いものだったよ。ここまで剣の腕が立つとは思ってもみなかったからね。ま、光の剣はぼくが本当の力を引き出してあげてるんだけどね」
楽しそうに語る姿なき冥王の声は、風に乗って私達の所に届く。
そんな自慢げに話す冥王は無視し、私はリナさんの側に寄ると小声で尋ねた。
「取りあえずガウリイさんを殴ってみます?」
「って、何でそうなるのよっ!?」
今はガウリイさんを正気に戻す事が先決である。
そう思ってごくごく当たり前の事を言ったのに、リナさんに怒られてしまい、私はくてんと首を傾げた。
「壊れたものは叩いて直す。常識でしょう?」
「どこの国の常識よっ!? 明らかに非常識でしょーがっ!! ひ・じょ・お・し・きっ!!」
「リナさんに言われたかないですよ、それ」
「ぁあ゛っ!?」
「……冗談です」
鬼の形相で睨まれ、私はすぐさま引き下がる。
これ以上怒らせるとさすがに身の危険を感じざるを得ないし、それに……。
思ったより落ち込んでいないようで安心した、というのもある。
「とにかく! 確かにフルパワーの光の剣と、手加減なしのガウリイの腕とがあったら、流石にこれは厄介ね」
剣を構えたガウリイさんを見据えながら、リナさんはきっぱりと言い切る。
どうやら私の案は完全にスルーされたらしい。
そしてそれを聞いたザングルスさんは、ジャリッと地を踏み締めると不敵な笑みを浮かべた。
「面白いじゃねーか。それこそ、このザングルス様の望む所よ」
だが───。
「生憎だけど、ぼくの狙いは君なんかじゃないんだ」
「何だとっ!?」
「ぼくの狙いは、あくまでもリナ=インバースだけさ。けど、ネタがバレちゃったんじゃしょうがないね」
その言葉を合図に、ガウリイさんの周りに黒いものが取り巻き始める。
「ガウリイっ!!」
リナさんが駆け寄るも、ガウリイさんは彼女の目の前で掻き消えた。
勿論、冥王フィブリゾの手によって。
「第二ラウンドはもっと趣向を凝らしてあるから、楽しみにしてると良いよ」
「フィブリゾ……」
憎々しげに呟くリナさんに、私達は何も言えず立ち尽くす事しか出来なかった。
ALICE+