チャバン(1/9)

サイラーグへの道を行きながら、私は深く長い溜め息をついた。

竜たちの峰(ドラゴンズ・ピーク)を発ってから、早数日。

冥王からのちょっかいは一度あったっきりで、その後の旅路は順調そのもの。

平凡で平穏な旅。

平凡で、平穏な。

何かが足りない旅。



足りないものはわかってる。

足りない者はわかってる。



でも、だけど。

わかっていても、どうする事も出来ない。

ただ、そのことに私は溜め息を吐くだけ。



そっと。

深くて長い、溜め息を───。


























「あ! リナさん見て下さい! 町がありますよっ!」



小高い丘まで来た私達は、そんなアメリアさんの言葉に足を止めた。

見れば彼女が指さす方向には、確かに町が見てとれる。



「何もかもシルフィールの言ってた通りね」

「これ程早く町が復興するとは思えませんけど……」

「確かにな」



ここから見た限り、サイラーグの町に傷痕は見当たらない。

リナさん達の話では町の中心に樹を残し、辺り一帯は荒野と化したはずなのに。



「どーもこーもないわよ。行ってみれば分かるし、行ってみなきゃ分からないわよ」



立ち止まる私達に、そう声をかけたのはマルチナさんだった。

どうやら彼女、本気で冥王の所までついてくるらしい。



「まぁ、ここでこうしてても始まらない事は確かですね」

「そりゃそうなんだけど」



ポリポリと頭を掻き、リナさんはもう一度サイラーグへと視線を移す。

その隣では、シルフィールさんが町の中心にある巨大な建物を見て呟いた。



「フラグーンが……わたくし達の心の支えだった神聖樹フラグーンが……ない」



おそらく、もともとは巨大な建物が建っている場所に、神聖樹があったのだろう。

記述によれば、その樹は一見すると森の様に大きかったとある。

その場所に見知らぬ建物があるというのは、不自然極まりない。



「…………どうします? このまま乗り込みますか?」

「とにかく今は様子を探る事が先決ね」

「……でもどうやって?」

「問題はそこね。このままノコノコ町へ行くってのも……」

「?」



一旦そこで言葉を切ったリナさんは、しかし。

次の瞬間には嫌な笑みを浮かべていた。



「ふっふっふー」



その不気味さに、思わず後退る私達。

それには構わず、リナさんはある一点を指差し自信満々に言う。



「この手でいきましょ!」

「ちょ、ちょっとリナ! あんた一体何考えてんのよっ!?」

「いーからいーから! あたしの言う通りにする! わかった!?」

「けど……っ」

「わ・か・っ・た!?」



鬼気迫る顔で凄まれてしまえば、反論出来る者はいない。

私達は言われるままリナさんの指示に従ったのだった。

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