サイラーグへの道を行きながら、私は深く長い溜め息をついた。
竜たちの峰を発ってから、早数日。
冥王からのちょっかいは一度あったっきりで、その後の旅路は順調そのもの。
平凡で平穏な旅。
平凡で、平穏な。
何かが足りない旅。
足りないものはわかってる。
足りない者はわかってる。
でも、だけど。
わかっていても、どうする事も出来ない。
ただ、そのことに私は溜め息を吐くだけ。
そっと。
深くて長い、溜め息を───。
「あ! リナさん見て下さい! 町がありますよっ!」
小高い丘まで来た私達は、そんなアメリアさんの言葉に足を止めた。
見れば彼女が指さす方向には、確かに町が見てとれる。
「何もかもシルフィールの言ってた通りね」
「これ程早く町が復興するとは思えませんけど……」
「確かにな」
ここから見た限り、サイラーグの町に傷痕は見当たらない。
リナさん達の話では町の中心に樹を残し、辺り一帯は荒野と化したはずなのに。
「どーもこーもないわよ。行ってみれば分かるし、行ってみなきゃ分からないわよ」
立ち止まる私達に、そう声をかけたのはマルチナさんだった。
どうやら彼女、本気で冥王の所までついてくるらしい。
「まぁ、ここでこうしてても始まらない事は確かですね」
「そりゃそうなんだけど」
ポリポリと頭を掻き、リナさんはもう一度サイラーグへと視線を移す。
その隣では、シルフィールさんが町の中心にある巨大な建物を見て呟いた。
「フラグーンが……わたくし達の心の支えだった神聖樹フラグーンが……ない」
おそらく、もともとは巨大な建物が建っている場所に、神聖樹があったのだろう。
記述によれば、その樹は一見すると森の様に大きかったとある。
その場所に見知らぬ建物があるというのは、不自然極まりない。
「…………どうします? このまま乗り込みますか?」
「とにかく今は様子を探る事が先決ね」
「……でもどうやって?」
「問題はそこね。このままノコノコ町へ行くってのも……」
「?」
一旦そこで言葉を切ったリナさんは、しかし。
次の瞬間には嫌な笑みを浮かべていた。
「ふっふっふー」
その不気味さに、思わず後退る私達。
それには構わず、リナさんはある一点を指差し自信満々に言う。
「この手でいきましょ!」
「ちょ、ちょっとリナ! あんた一体何考えてんのよっ!?」
「いーからいーから! あたしの言う通りにする! わかった!?」
「けど……っ」
「わ・か・っ・た!?」
鬼気迫る顔で凄まれてしまえば、反論出来る者はいない。
私達は言われるままリナさんの指示に従ったのだった。
ALICE+