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「一国の王女のわたしが何で荷馬車なんか……」



面白くなさそうにぼやいたマルチナさん。

そこにすかさずリナさんの叱咤が飛ぶ。



「ぶつくさ言わないの! いいからこのまま町の中を一回りすんのよ」



私達は今、丁度通り掛かった荷馬車の荷台に(無断で)乗せてもらい、町の様子を探っていた。

荷台には藁が積んであり、身を隠すのには好都合。

ただ、藁の間から並んで顔を出しているので異様と言えば異様な光景ではあるが……。

私が見たかぎり、町には活気があり、とても壊滅していたとは思えない印象だった。

まるで壊滅したというのが嘘であるかのような、平和な日常がそこにはある。

───けれど。

リナさん達が私に嘘をつく理由は見当たらない。

と言うことは、何か異常な事態が起きている事になる。

そしてその元凶は容易に想像がついた。



「これは……」

「どうしたんです?」

「ここは新しく出来た町じゃありません」



シルフィールさんが町並みを見て断言する。

その顔には戸惑いが見て取れた。



「どういう事です?」

「……あの戦いで滅んだはずの町が元通り、復活してるんです」

「なんですって!?」

「……元通りって……」

「言葉の通りです」



それは有り得ない事だった。

有り得ないけど、この町に住んでいたシルフィールさんが言うなら間違いないのだろう。



「リナさん、確かめたい事があるのでついて来て頂けますか?」

「わかったわ」



頷きリナさんは荷馬車から飛び降りた。

それに続く私達。



「こちらです」



シルフィールさんは迷い無く歩みを進め───やがて私達がやって来たのは町外れの木々が生い茂る場所だった。



「これを見て下さい」



生い茂る木々の一本を指し示し、シルフィールさんはその木に近づいて行く。

見るとその木には何本もの横線が刻まれていた。



「これは?」

「……これは、わたくしが子供の頃に毎年どれだけ背が伸びたか測った傷なんです。
あの時の戦いで、この木も無くなってしまったはずなのに、それが元に戻っています」

「それが、この町が元の通りに復活した証拠って訳ね」

「馬鹿な! この町はコピーレゾとの戦いで……」



ゼルガディスさんが訝るのも無理は無い。

自らの目で見たことなら尚更、信じ難いのも頷ける。

でも現実に町は元通りに戻っている。

おそらくは冥王の仕業───。

そんな事を考えていると、木々の向こうから歩いて来る人物が目に入った。

としの頃なら四十前後のその人物は神官服をまとっており、そして、彼女に呼びかける。



「……シルフィール」

「っ!?」



私達と向かい合わせに立っていた彼女は、その声に肩を震わせた。

鳥の鳴き声の他に、皆が息を呑むのが聞こえる。



「ま、まさか……そんなっ!?」



信じられないと言うように、シルフィールさんはゆっくりと振り返り、



「お父様っ!!」

「シルフィール」

「お父様っ! ご無事だったのですね? わたくし、てっきりあの時に……」

「それがな……」



父親の元に駆け寄り、溢れる涙を拭うシルフィールさん。

その彼女の肩に手を置いたのはリナさんだった。



「感激の再会のとこ悪いんだけど」

「リナ=インバース殿」

「どーいう事なのか説明してくれない? この町がどーして元通りになっているのか」



その言葉に彼女の父親、神官長さんは無言の肯定を示したのだった。

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