視界が開け、見た先。
そこには円柱状にくり抜かれた空間があり、外壁に沿うように階段が取り付けられていた。
何気なく下を覗いて見ると、相当な高さがある。
「これ……歩いていくの?」
ぱっと見、底が見えない程の深い縦穴に、私はうんざりした。
直線的な階段ではない分、降りるのには更に時間が掛かりそうである。
そんな思いから辟易しつつゼロスに問うと、彼は苦笑しながら答えた。
「僕はそれでもいいですが、それじゃあ冥王様の所に着いた時、ユウさんバテてるでしょう?」
「今でも充分バテてるんだけど」
「では浮遊で降りましょうか」
彼の提案に頷き、私はさっそく呪文を唱えた。
フワリと身体が浮き上がり、ゼロスの導きに従い地を離れる。
「この下に冥王様がいらっしゃいます」
「ん」
と言ってもこの速度なら、冥王の元に着くのはもう少し先だろう。
それまでに何か対策の一つでも考えなければ。
今から会いに行くのは、魔王の腹心の中でも特に力のある相手。
……あの魔竜王でさえ簡単に滅ぼしてしまう程の……。
「……と、そう言えば」
「はい?」
「今更だけど、傷はもう良いの?」
「……えぇ。動く分には支障ありません」
「……そう」
───動く分には。
それはつまり、完全では無いと言うこと。
まぁ、私達の前に現れなかった事から考えて、予想はついていたんだけど。
「ところで、僕もユウさんにお聞きしたい事があるんですが」
「ん?」
「リナさんの話では、ユウさんは異空間にいるとおっしゃっていたんですが……」
………………。
あぁ、そうか。
すっかり失念していたけど、ゼロスは知っていたのか。
「あー、それはねぇ……色々あったのよ」
「色々?」
「そう、色々」
訝るゼロスをそのままに、私はそっと視線をそらした。
まさか空間移動しました、とは言えない。
かと言って嘘を言うのも、はばかられる。
「………………」
「………………」
無言の問い掛けが、容赦なく私の後頭部に突き刺さるが、私はそれに気付かぬフリをした。
しばし何とも言えない状態が続く中、やがて薄ぼんやりとした緑色の光が視界に入り、私の意識はそちらへとそれる。
……?
段々下降する内に、それはクリスタルの輝きであることが分かった。
巨大な空間に存在する、巨大なクリスタル。
「アレは?」
「冥王様のお力で、この町の人々の魂を閉じ込めてあるんです」
「………………」
魂を……。
それでこの町の人々を操っているのか。
「随分悪趣味なコレクションね」
「そう? ぼくは素敵だと思うけど」
答えたその声は、冥王フィブリゾのものだった。
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