「やぁ、お姉ちゃん。いらっしゃい、会いたかったよ」
私が地面に着地すると同時に冥王はそう、うそぶいた。
彼は魂が閉じ込めてあるのとは別の大きなクリスタルに腰掛け、足をぶらつかせている。
その姿は子供以外の何ものでもなく、無邪気そのもの。
「お邪魔してます……って言っても強制的に連れてこられたんですけどね」
「へぇ、酷いことするのがいたもんだ」
「………………」
揶揄するように言った彼に対し、ゼロスは笑顔のまま押し黙った。
チラリと見やれば、完全に張り付いた笑顔である。
それもそのはず。
『酷いこと』をしたのはゼロスで、その『酷いこと』を命令したのは外ならぬ冥王自身。
ゼロスにしてみれば面白いはずもない。
ましてや冥王は魔王の腹心。
同じ腹心の部下の立場では反論も出来ず、そんなゼロスを見て、冥王は可笑しそうに笑うだけ。
…………この二人。
「……実は仲悪いのね」
「ん? 何か言った?」
「いえ、別に」
とは言ったものの。
隣にいたゼロスには聞こえていたらしく、ピクンと片眉が跳ね上がっていた。
…………うん。
ゼロスは本気で冥王の事を嫌ってるらしい。
それにはあえて触れず、私は冥王に問い掛ける。
「それで、私に聞きたいことってなんです?」
「あぁ……そうそう、そうだった」
ぱんっと手を打ち鳴らし、冥王は笑顔で言う。
「お姉ちゃん、何者なの?」
───と。
それはこの時軸に来て、三度目の質問だった。
一人はゼロス。
一人はアクアさん。
私は苦笑混じりに、そして三度目になる回答をした。
「皆さん何を勘ぐっているのか知りませんが、私はただのしがないパシリ巫女ですよ」
「ただの……ね」
その答えに納得いかないのか、彼はおうむ返しに呟く。
そしてニヤリと口角を持ち上げた。
子供には似つかわしくない、意味ありげなその笑みに、紛れもなく彼が魔族である事を意識させられる。
「ぼくとしては竜たちの峰で『金色の母』の力を使った者が、ただの人間とは思えないんだけど?」
「っ!?」
冥王の言葉に、隣にいたゼロスが息を呑むのが聞こえた。
金色の母───つまりは『金色の魔王』の事。
「それでもまだシラを切るつもりなの? お姉ちゃん」
「…………」
何も言わないが、ゼロスからの視線が、物問いたげに投げ掛けられている。
やれやれ……。
そろそろ潮時かな……。
そう思いつつ、私はひとつ溜め息を吐いた。
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