「おや、残念。あのまま油断していてくれれば、後ろから貫いて終わりでしたのに」
「そんな簡単に終わったらつまらないじゃない?」
言いつつ今度は冥壊屍を放つ。
召喚魔法の一種で、相手の精神と肉体を滅ぼすその『影』は、地面を伝い一直線にゼロスへと突き進む。
が、接触する瞬間に杖を一閃され、『影』は跡形もなく消滅してしまった。
「まぁ、それもそうですね。どうせなら恐怖と絶望を与えて食事を楽しみましょうか」
「……できれば辞退したいんだけど」
「そう遠慮なさらずに」
言葉と同時に放たれる魔力の光。
先程と同じ物のようだが、今度はその数が二つに増えていた。
「……っ」
避ければまた後ろから狙われる。
私は杖をかざし、その先端でスッと空中に弧を描いた。
───しかし。
ゼロスが放ったそれは、円に触れる手前で軌道を逸れると大きく回り込み始める。
私は急ぎ呪文を唱え、風の結界を自らの周りに張り巡らせた。
───その途端。
耳元をかすめ、ビュンッと過ぎ去る『何か』。
結界が破られた!?
思うのと同時に術を解除し、私は振り向きざまに杖を振う。
バシュッ!
二つの魔力球は、まるで杖に吸い込まれる様に当たり、何とか事なきを得た。
その事に安堵するものの、かすかな懸念が湧きあがる。
それはとても小さな変化ではあったのだが、見過ごすには相対している相手が悪すぎる。
杖を持つ手に自然と力が入り、背中に嫌な汗が流れた。
「ふむ。結界で進路がズレちゃったみたいですねぇ」
それを振り払うべく、小首を傾げるゼロスを無視して、青魔烈弾波を放つ。
目標に向かって直進する衝撃波は、青い光となってゼロスに向かうものの、その直線的な攻撃はあっさりと避けられ、後ろに飛んでいってしまった。
「…………」
どうするか……。
目まぐるしく思考を巡らせ、打開策を考える。
一撃必殺とまではいかないまでも、崩霊裂辺りが当たればそれなりのダメージを与えられるとは思うのだが……。
私の体術と動体視力で何とかなるなら、今までの攻撃も無駄にはなっていなかっただろう。
冥王の言った通り、このまま小技を使ってどうにか出来る相手でも無いし。
さぁて、どうしたもんだか。
杖を握る手に力を込め、ゼロスを見据え───。
その様子を見ていたゼロスはクスッと笑みを深くした。
「……良いですねぇ、その表情」
───ゾクゾクしちゃいます。
ALICE+