広がる青と緑。
空はどこまでも続き、また、大地も果てしなく続いている。
そんな小高い丘の上。
一陣の風が吹き抜け、私はなびく髪を押さえながら呟いた。
「信用はしてないけど……」
───信頼はしてるから。
草木のざわめきに私の言葉は飲み込まれ、彼は不思議そうに声を上げた。
「今、何て……?」
けれど私はそれには答えず、彼に背を向けたまま言葉を紡ぐ。
魔族である彼に願いを伝える為に。
彼が魔族だからこそ、起こりえる未来の為に。
「ねぇ、ゼロス。一つだけ約束して」
「……何ですか?」
風がおさまり、再び静寂が訪れた丘で、私の声はゼロスへと届けられる。
「もし、仮に」
それは起こりえる未来。
神託めいた確信。
「もし、私を殺す時が来たら、その時は……」
「……ユウさん?」
ゼロスの訝しげな声が響く。
私は構わず続けた。
「その時は、後ろからではなく前から来てね」
あなたの姿を確認して。
あなたを見届けてから。
「向かい合って、他愛ないお喋りをして、そして殺して」
あなたは魔族だから。
それが自分の意思でなくても、あなたは私を殺すでしょう。
きっと、いつもの笑みを貼り付けて。
だから。
───だから。
最期はゼロスの姿を見せて。
多分私は勝てないだろうから。
せめて、あなたの姿を。
私に見せて。
「………わかりました」
一瞬の間を置いてからの彼の返事を聞き、私は自嘲の笑みを浮かべ、うつ向いた。
そして意地悪く笑い、クルリと振り向きゼロスを見る。
「約束、したからね?」
「でも、守らないかもしれませんよ?」
「そうかもしれない。でも……」
私は信じてる───。
「それに、その時はめい一杯抵抗するつもりだし……ね?」
ただじゃ死んであげません。
そう悪戯に笑えば、「それは骨が折れそうですねぇ」とゼロスも笑った。
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