ぐらりと傾いた身体は、
私にはどうしようもなくて。
「ユウさんっ!?」
悲痛な、
叫びにも似たゼロスの声に、
私は目を閉じた。
おかしいな……。
こんなはずじゃなかったのに。
いつかの約束が、頭を過ぎる。
『殺す時は前から来てね』
その言葉が示す通り、ゼロスが私を殺す時は前から現れる。
それが約束だから。
嘘をつかない、
それは裏切られることの無い、
彼との約束だから。
でも。
今回、彼は後ろから現れた。
後ろから、杖を突き付けられた。
『それが貴方の答え?』
その問い掛けに返って来たのは肯定の言葉。
そう。
ゼロスは初めから私を殺す気なんてなかったのだ。
彼は絶対のはずの命令に背いた。
背いて私に手を貸してくれた。
バレない様に術の応酬を繰り広げ、冥王への攻撃のチャンスを作るため。
私達は手を組み、共謀した。
冥王の視線をかい潜り、流れ玉として仕掛けて。
そのことごとくは失敗してしまったけれど……。
「ユウさんっ!!」
慌てた様子のゼロスに呼ばれた私の名。
いつの間にだろうか。
見上げれば彼の顔があり、
気づけば、
私は彼の腕の中にいた。
けれど。
見上げた先に笑顔は無く。
そこには、
悲しげな光があるばかり。
大丈夫。
そう言いたいのに、
安心させてあげたいのに。
ごめんね。
傷口からとめどなく溢れる赤い血は、
軽口をたたかせてはくれなかった。
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