「へぇ、命令に背くのかい?」
冥王がゼロスに問い掛ける。
その嘲りにも似た声に。
ゼロスが腕にぎゅっと力を込めた。
何かに堪えるように。
何かを堪えるように。
───そして。
「もともと、僕は獣神官です……あなたの命令を聞くいわれはありません」
吐き出されたのは決別の言葉。
対して冥王は面白そうに言う。
「ふーん、そういう事言うんだ?」
そう言ってのけた。
その表情に笑みを乗せて。
「………………」
その言葉の内に潜む嘲笑と怒り。
それを感じ取ったゼロスはさらに強く私を抱きしめた。
まるでそれは覚悟を……。
滅びる覚悟をしているようで。
まずいな……。
このままじゃ二人とも……。
何とかしようと片手で傷口を押さえ、力の入らない身体を支える為に、床に手をつく。
すると。
コツンと小指に何かが当たった感触がした。
視線を落とせば、先程ゼロスが投げ捨てたナイフがそこにある。
そのまま辺りに視線を走らせ、ある事を確認して。
その事実に、私は思わず口の端を持ち上げた。
偶然か必然か。
だが今はそのどちらでも良い。
大切なのはこのチャンスを生かすか否か。
「役立たずの駒は必要ないよね」
言ってコチラに手をかざす冥王。
その先には既に魔力の光が輝いている。
迷ってる暇は無い。
私は唱えていた術を中断し、力を振り絞る。
そしてナイフを掴み、
それを床に突き付けた。
先程放ったナイフと折れた杖が織り成す、
簡易魔方陣の頂点に。
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