「リナさんっ!!」
彼女の身体から力が抜けるのが分かった。
制御していた混沌のエネルギーの塊が、彼女自身を飲み込んでゆく。
「ふっはっはっはっはっはっ! さぁ暴れるがいい! 混沌の力よ、この世界を飲み込んでしまえ! はっはっはっはっ!」
成す術もなく動揺する私に対し、完全に力に取り込まれたリナさんを見て、冥王は狂ったように笑い声を上げる。
が、しかし。
突如エネルギーの塊が収束したかと思うと、そこに何事も無く佇むリナさんの姿があった。
───いや、アレは……。
それを見て、冥王は驚きの表情を見せる。
「……せ、制御した!? あの力をっ!?」
『彼女』の手には混沌の力が納まり、絶えずエネルギーが渦巻いている。
そして『彼女』からは金色の輝きが放出されていた。
そんな状況下で、『彼女』は言う。
『我が前に立ち塞がりし、滅びを望むものよ。我が力もて、お前には滅びを与えん』
それはリナさんの『声』であって、リナさんの『言葉』ではない。
そして『彼女』は微動だにせず、その圧倒的な力を持って冥王を吹き飛ばした。
「ぅわあああぁーっ!!」
壁に衝突し、床に叩きつけられた冥王は『彼女』のプレッシャーから逃れようと、その身を壁に溶け込ませる。
───けれど。
『無駄なことを……』
「うわあぁぁああーっ!?」
あの『彼女』から逃れられるはずもない。
『彼女』の前へと引きずり出され、あまりにも強大無比な力を見せ付けられ、冥王が半ばパニックに陥りながら『彼女』へ叫ぶように問い掛ける。
「……お、お前は一体……!?」
『彼女』はそれに答えた。
『全ての闇の母。在りし日の姿に帰る日を夢見続けるもの……』
威容を誇る、その姿。
何者にも侵されぬ気高き精神。
『闇よりもなお昏きもの。夜よりもなお深きもの』
そしてこの旁若無人とも言える力を間違えようもない。
『混沌の海、全ての混沌を生み出せしもの。汝らは我をこう呼ぶ───……すなわち』
そう、『彼女』こそ。
───『彼女』こそが世界を創り、混沌に君臨する金色の魔王。
『───……金色の魔王』
「あぁああぁああぁぁあああぁああ───!!」
その事実に。
冥王の絶叫が、悲鳴が、絶望が。
この空間一帯を包み込んだ。
あとがき
滅びを求める者の絶望───。
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