「人が気を失ってたのを良いことに何しようとしてたのよっ!? 乙女の身体……いいえ、あたしの身体を抱くだなんて良い度胸じゃないのよっ!!」
「お、乙女って、誰だっ!?」
「あたしよ、あたしっ!」
………………。
地上に戻って来ると、ひと足早く戻っていたリナさんとガウリイさんが喧嘩をしていた。
どうやら照れ隠しの一種みたいだけど……。
何と言うか……。
悩んでるのが馬鹿らしくなってくるなぁ。
アメリアさんやゼルガディスさん、それにシルフィールさんは呆れた眼差しでそれを見ている。
私は一つ息を吐くと、二人を仲裁すべく声を掛けた。
「まぁまぁ、リナさん。皆無事だったんだから良いじゃないですか」
「良くないっ……て、ユウっ!?」
「ユウさんっ!」
「無事だったんですねっ!」
振り向いた彼女達に笑顔で答え、無事である事を示す。
───が。
「しかし、その格好はどうしたんだ?」
「……あぁ、ちょっとドジっちゃいまして」
ゼルガディスさんの言葉に、自身の姿を思い出し、笑顔は苦笑に代わる。
それを見て、リナさんが呆れた眼差しをコチラに寄こした。
「っていうか、あんたと初めて会った時もそんな格好してたわよね」
「そういえば、そうでしたね。ここまで酷くは無かったですけど」
「お前はゴタゴタに巻き込まれるのが趣味なのか?」
「いや……そういう訳では……」
何故か毎度毎度巻き込まれてるけど。
でもリナさん程では無い。
……と思いたい。
そんな現実逃避をしていると、ガウリイさんが今後の話を切り出した。
「なあ、リナ。これからどうするんだ?」
「そうね。とりあえず、近くの町まで行きましょーか。話はそれからでも遅くないでしょ?」
「そうだな。腹も減ったし」
「ゆっくりしたいですしね」
「あぁ」
「ぅっしゃあ! そうと決まれば早速次の街に向かってしゅっぱ〜つっ!!」
『おぉっ!!』
元気に掛け声を上げた面々。
そんな彼らに。
リナさんたちに。
私は二度目の別れを告げる。
「あの、それじゃあ私はこの辺で……」
「へ?」
「ユウさん一緒に行かないんですかっ!?」
「……はい。異界黙示録を見るという目的も果たせましたし」
言って浮かべた微笑みは、寂しさを隠せなかったみたいで。
リナさんが呆れたように言う。
「なーに水くさい事言ってんのよ。次の町に行くくらいは付き合いなさいよ。ユウには色々助けてもらったし、食事くらいなら奢ったげるわよ」
「えええええぇっ!?」
「おいリナ! お前変な物でも食ったのか!?」
「り、リナさんが奢るって……」
「こんなに晴れてるのに雨でも降るんでしょうか?」
「混沌の中で少しは強欲な性格が矯正されたのかもしれんな」
「あ、あんたらねーっ!?」
皆の感想に、リナさんが怒りを爆発させる。
が、それも束の間。
リナさんは一つ溜め息を吐くと私に向き直り、照れ臭そうに言った。
「まぁ、あんたがどうしても嫌だって言うなら仕方ないけど。そーじゃ無いなら付き合いなさいよ」
「…………リナさん」
良いだろうか?
少しだけ。
あと少しだけ。
リナさん達と一緒に居ても。
この時代に居ても。
「そうですね。それじゃあ……」
───けれど。
『ご一緒します』
その言葉は、風に消え、彼女達に届く事はなかった。
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