(3/6)

それは突然だった。

辺りに閃光と疾風が走り、あまりの眩しさに目を閉じた。

そして、そんな私の耳に入って来た二つの声。



「あ、居た居た♪ やっと見つけたよ」

「……やれやれ、門限はとっくに過ぎてますよ、ユウ」



軽い声音に、淡々とした口調。

そのどちらもが聞き覚えがあるもので、そして何より呼ばれた私の名に困惑した。

この……声は……。

……まさか……。

私は信じられない思いを胸に、恐る恐る目を開ける。

───すると。

光が収まったこの場に、先程までなかった影が二つ増えていた。

一つは黒い制服を着崩した、紫黒の髪に灰紫の瞳の持つ妖艶な笑みを浮かべる人物のもの。

もう一つは同じ制服をきちっと着こなし、未だ治まらない風にハニーブラウンの長い髪を風になびかせる、深紅の瞳を呆れさせた人物のもの。

それを見て、私は思わず息を呑んだ。



「……ユーリに、ディルっ!? なんで、二人が……」



声で予想はついていたものの、やはり驚きは隠せない。

居るはずのない二人。

彼らは本来、私が居るべき時間の住人。

その二人がここに居る。

その意味は───。



「もちろんユウを連れ戻す為に決まってるでしょう」



呆れの色を含ませた言葉は、私の心臓をドキリとさせた。



「何ヶ月も塔を留守にして、心配したんだよ?」

「溜まりに溜まった仕事、きっちり片付けてもらいましょうか」

「その前に僕らに心配かけた事を反省してもらわなきゃね」



そんな私に気づいているのか、いないのか。

二人は口々にそんな事を言いながらコチラに歩み寄ってくる。

だが、次の瞬間。

不意に、彼等はピタリとその動きを止めた。



「……?」



混乱しつつも、それを不思議に思って首を傾げる私。

───すると。

直ぐさま硬直から脱した二人は、物凄い勢いでコチラに近づいて来て、私の肩を掴むと鬼気迫る表情で次々と質問を投げ掛けてきた。



「どうしたのっ!? それ!」

「誰にやられたんですっ!?」

「傷はっ!? 傷はどこっ!?」

「見せなさい!」



そんな彼等の行動について行けず、今度は私が身を固まらせてしまう。

そうこうしている内に、いきなり血まみれのマントと上着を剥ぎ取られ、更に二人は、傷はどこだと騒ぎながら、身体をチェックする。



全く……相も変わらず過保護なんだから。



「……もう治したってば」

「無い、傷痕も無いねっ!?」

「うん、無い無い」



私は呆れながら二人から服を奪い返し、それらをまとう。

しかし、それで治まる彼らではない事は、長い付き合いの私が一番よく知っている。



「で、これは誰にやられたのっ!?」

「血の量からみて、不注意やただの事故では無いのでしょう? 誰にやられたんですっ?」



ゼロスに。



なんて口が裂けても言えない。

言ったが最後、彼を地の果てまで追い掛け、制裁を加えるだろう。

例え相手が魔族でも。

この二人ならやる。

絶対殺る。

そうならない為にも、どうごまかそうかと思考を働かせ───。

そこにリナさんが気まずげに声を掛けてきた。

<<>>
[ 戻る ]


ALICE+