「えーと、あんたの知り合い?」
それにいち早く反応したのは私ではなく───。
「あぁ、これは失礼。僕はユーリ」
髪を掻き上げ、友好的な笑顔を浮かべてリナさんに近づくユーリは、私が止める間もなく彼女の前まで移動し、恭しく彼女の左手を取ると、ニッコリ笑って尋ねる。
「良ければ君の名前も教えてくれないかな、お嬢さん?」
そんな彼に対し、リナさんは若干引きつった笑みを浮かべた。
まぁ、どちらかと言えば彼はリナさんの苦手なタイプだろう。
ある程度扱いが分かっている私でも、彼の言動はたまに辟易してしまうし。
「えっと……リナ=インバースよ」
「リナちゃんか。情熱的な紅い瞳がとても素敵だね」
言ってユーリは、戸惑うリナさんの指先にキスを落とす。
一瞬、辺りに落ちる沈黙。
そして。
「なっ!? なななっ!?」
瞬時に何が起こったか理解したリナさんは、その顔を真っ赤にさせていた。
そう言えば、以前ゼロスが頬にキスした際も赤くなっていたっけ。
そんな事を思い出していると、彼はニコリと笑みを深くし、リナさんに顔を近づけ囁き始める。
「ん? 指先に触れただけで真っ赤になるなんて。リナちゃん可愛いね、もしかして初心な純情さん? もし良ければ僕と一線……」
ガッツン!
「連れが失礼しました。私はディルと申します」
ユーリの強制抑止力ことディルは、手にしていた杖で暴走し始めた彼を殴りつつ、涼しげに自己紹介をする。
その場で蹲るユーリを、眼鏡の奥の紅い瞳で冷ややかに睥睨しながら。
それを見てアメリアさんが戸惑いの声を上げる。
「な、何か痛そうな音しましたけど……」
「あぁ、お気になさらず。いつもの事ですから」
「……いつも」
「そうそう、ディルってば怒りんぼうさんなんだよ。僕が人に声を掛けるといつもすぐ殴るんだから。怒りんぼうの上に焼き餅やきだなんて、可愛いよね」
うん、まぁ……何と言うか。
……前々から思っていた事ではあるけど。
ユーリって本当に凄いと思う。
この冷徹利己主義者を『可愛い』だなんて。
ディルの事嫌いじゃないけど、それだけは肯定しかねる。
そんなどうでもいい事に思考を奪われていると、いつの間にか立ち上がっていたユーリは、アメリアさんの頭を撫でながら、ちゃっかり抱き寄せていた。
「でもこんな可愛い子を目の敵にするなんて酷いよね? 怖がらせちゃったんだったらゴメンね?」
「あ、いえ……」
「よしよし。怖くないからね。もうディルってば、僕を心配してくれる心優しい女の子を怖がらせてダメじゃないか」
「あ、あの……っ」
「いいから離してあげなさい。困ってるでしょう」
「それはおかしいよ。僕は挨拶の一環として、スキンシップを取ってるんだから。挨拶して困る人はいないでしょ?」
「アンタのそれは挨拶の域を出過ぎてるんですよ」
「そう? お姉さん方には結構評判良いんだけど」
そんなやり取りが繰り広げられる中。
ユーリの腕に囚われたアメリアさんを見かねたのか、常識人のゼルガディスさんが声を掛けた。
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