「おい。何でも良いが、取りあえずソイツを離してやってくれないか」
その声に振り向いたユーリは、彼の姿を見て、その瞳をきょとんとさせる。
更にアメリアさんからそっと手を離すと、ゼルガディスさんに向き直り近づいていった。
「……ねぇ君」
そして徐々に距離を縮め、彼の目の前で足を止めると、ゼルガディスさんにとって忌まわしい言葉を口にする。
「もしかして合成獣なのかな?」
「それがどうした」
ムスっとするゼルガディスさん。
普通ならそこで足を踏み入れるのを躊躇うだろう。
しかしながら、彼はその程度の不機嫌で止まる様な相手ではない。
「見たところゴーレムと……ブロウ・デーモンの合成獣かな? それなのに自我はちゃんと人間のものなのか。それは意図してやった事なの? それとも偶然? どちらにしても面白いチャレンジ精神だね、尊敬に値するよ」
「……は?」
「ちょっと触っても良い? いや、触らせてもらうよ」
「はぁっ!?」
その突拍子もない言葉に、ゼルガディスさんは素っ頓狂な声を上げた。
そこにクールなゼルガディスさんの姿はもはや無い。
対してユーリは彼が拒否する間もなく頬に手を添えると、無表情のまま耳をつまみ、指でその感覚を確かめるように滑らせていく。
「なっ!? や、やめろっ!!」
その行為に、顔を赤く染める二人目の犠牲者。
……そう言えばゼルガディスさんも耳が弱いんだっけ。
何と言うか……ご愁傷様としか言いようがない状況である。
「へぇ〜、ちゃんと細部にまで神経があるんだ? 凄いね君!」
『…………』
そんな二人を見た、周りの何とも言えない空気。
そして皆の物言いたげな視線が私に集中する。
……いや、私を見られても、ねぇ?
言って止まるなら助け舟は出すけど……。
でもまぁ、説明位は出来るか。
「……彼、人類博愛主義者なんですよ」
「人類?」
「えぇ、男も女も子供もご老人も関係なく。愛でて止まないんです」
言って再び二人を見れば、ユーリは興味津々な様子でゼルガディスさんにまとわりついていた。
「ブロウ・デーモンって羽あったっけ? 君にもついてるの?」
「止めろっ! 服に手を掛けるなっ!!」
これを愛でると言うのかは、はなはだ疑問ではあるけど。
そうこうしている内に、ついにキレたゼルガディスさんが、ビシッとユーリを指し、ディルに抗議する。
「あんたも黙ってないでコイツを黙らせろっ!」
「孕む訳じゃあるまいし、女子供じゃないんだ。自身で何とかしなさい」
『…………』
沈黙。
のちに複数の物言いたげな視線が再度集まる。
いや、だから私を見られても……。
彼らから目をそらす他に、私に残された道は無い。
「もう、ディルってば本当に焼き餅やきさんだなぁ。ごめんね、僕が君に興味を持ったから焼いてるんだよ」
「違います」
「大丈夫、僕はちゃんとディルも好きだよ?」
「頼むから人の話を聞きなさい」
「…………」
「あ、勿論ユウの事も大好きだから安心してね♪」
無言で彼らを見つめれば、ニッコリ笑ってユーリが付け加える。
久しく会っていなかったけど。
……うん。
やっぱり二人は相変わらずらしい。
ユーリの愛も、ディルの容赦の無さも。
その様子に。
二人が連れてきた懐かしさに。
私は苦笑を浮かべながらリナさん達に改めて彼等を紹介した。
直ぐそこに、別れがあるのに。
忘れてなんかいないのに。
コレからが始まりであるように。
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