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しかし、人の都合はお構いなしな『彼女』に言及したところでどうなるものでもない。

その事を嫌と言う程知っている私は、机の引き出しから数枚の紙を取り出すと、それを差し出し言った。



「『水竜王秘伝のレシピ』です。これで良いんですよね?」

「えぇ、ご苦労様」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「……あの、まだ何か?」



レシピを受け取ったのにもかかわらず未だコチラを見ている『彼女』に尋ねれば、肩を竦められ、あまつさえ溜め息を吐かれた。

……いや、そこで溜め息を吐かれる理由が分からないのだけれど。

え……まさかとは思うけど。



「料理まで用意しろなんて言いませんよね?」

「まさか、それは『S』にやらせるから安心なさい」

「……はぁ」



彼も大変だな。

まぁ、満更でもなさそうだから良いんだけど。

それに余計な口を出してやっぱりアンタが用意しなさいなんて言われたら面倒だし。

でも料理の事じゃないとすると……。



「じゃあ一体……?」

「ま、こればっかりはアンタの問題だからね」

「……それってどういう?」



しかし『彼女』はそんな私の疑問に答える事なく踵を返すと、「じゃあね」と簡単な挨拶をして、レシピの束をひらひらと振りながら呆気なく虚空に姿を消してしまう。

消える瞬間、「何の為に時間を渡ったのかしらね〜」という呟きを残して。



「…………何の為って」



そんな事は『彼女』自身が一番分かっている事だろう。

水竜王のレシピ。

それを知るために私は過去へと飛ばされたのだ。

一度ならず二度までも。

世界を見て回るってのも面白いわよ、なんて軽く送りだされ───。





「………………」





───いや。

今まで『彼女』の我儘はいつもの事と諦めて深く考えなかったけど、いくら面白そうだからと言ってわざわざ私を使うだろうか───?

『彼女』は待つことが嫌いなのに。

本当に料理が食べたかったのなら、時間のかかる私に行かせるより、『彼』にでも命令しそうなものなのに。

ゼロスを煙に巻くのに丁度良かったから大義名分として使わせてもらったけど、もしかしてレシピはついでで、私を送り出した本当の理由は───。













あとがき

神慮。

神のこころ。
───世界を見て回る意味。

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