空間を渡り街まで来ると、適当な宿屋を取ってユウさんを寝かしつけた。
それからベッドサイドに持ってきた椅子に腰掛け、様子を見る僕。
だけど……。
「看病なんてした事無いですしねぇ……」
宿屋のおかみさん曰く、
『ただの風邪なら栄養のあるもの食べさせて、しっかり休ませるんだね』
との事。
僕は言われた通り……。
と言ってもユウさんは意識を失っているので、取り敢えず彼女をベッドに寝かしつけ……。
それで僕の出来る事は終わってしまった。
「………………」
僕はする事もなく、改めてユウさんに視線をやる。
波打つ白銀の髪。
蒼き瞳は閉じられ、桜を彷彿とさせる薄いピンク色の唇からは小さな吐息。
白い肌は熱で上気し、ほんのりと赤みがかっている。
「………………」
その姿に。
何とも言い様の無い気持ちが再び押し寄せてきた。
「だから言ったじゃないですか……」
一緒に行こうと。
そうすれば……。
そこまで考えて、ふと思う。
…………そうすれば?
一体なんだと言うのか。
もし仮に、一緒に居ればもう少し早くユウさんの体調の変化に気付けたかもしれない。
けれど、それが何だと言うのだろう。
別に昨日今日会った人間がどうなろうと僕には関係ない。
なにより僕には他にやる事がある。
やるべき事がある……。
なのに───。
「こんな事してたら獣王様に怒られちゃうじゃないですか……僕」
ユウさんの頬に手をやり、その熱さに眉を顰める。
「───全く、貴女と言う人は……」
ユウさんはただの人間で。
ただの興味の対象で。
ただの……。
「起きてください、ユウさん」
貴女には愚痴を聞いてもらわなければならないんですから。
「ユウさん」
熱で浮かされてようが何だろうが僕には関係ない。
だって僕は魔族だから……。
貴女の命を脅かす存在だから。
……だから困るんですよ。
こんなのは。
「ユウさん」
本当に……困るんです。
「早く起きてください」
じゃないと───。
「───全く、本当に貴女と言う人は……」
僕をこんな気持ちにさせるのは後にも先にも貴女だけですよ……。
あとがき
白銀。
白き銀は───
黒の隣で輝きを増す。
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