「……きろ……」
あぁ、
誰かが何かを言っている。
「……おい」
その声は次第に大きくなっていき……───。
「いい加減起きろ、何時だと思ってる!」
何を言っているのか半分以上理解できなかったが、起きろと言う3文字だけは私の眠りを妨げるものだと本能的に理解し、その声から逃れるように背を向ける。
「起きないってんならキスしちまうぞ」
やだ。
まだ私は寝てたいの。
明日に控えた戴冠式を前に、昨夜から昼間近くまで書類仕事をしていたのだ。
私には眠る権利があるはずだ。
それなのに睡眠の邪魔をするとは一体どういう了見か。
正義が大好きなお姫様に言わせれば、人の眠りを遮ろうだなんて、すなわちそれ悪である。
さらに悪人に人権は無いってリナさんも言っていたし、そんな非常識人の声に耳を傾ける必要は無いはずだ、うん。
朦朧とする頭でそんな事を考え、私は声を拒絶するように背を向けたまま身体を丸める。
───けれど。
空気の読めない声の主は諦めなかった。
「それでも良いのか?」
「…………」
「俺は聞いたからな」
何かものすごく理不尽な事を言われた気がする。
そう思うのとほぼ同時に肩に手が置かれ、無理やり体の向きを変えられた。
自然と眉間にしわが寄るのを感じたが、この感覚には覚えがある。
人の都合はお構いなしな、この行動は……。
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