何だろう……?
見覚えの無いその白い箱に、私は首を傾げる。
「お? どした?」
「ねぇ、あれってクレハが置いたの?」
そう尋ねれば、彼もまたテーブルの上の小箱に視線をやり、『いや』と首を横に振る。
……………………はて?
そうなると一体誰が置いたのか。
何か手がかりが無いかとテーブルに近づいてみたが、箱の他には寝る前と同じく書類とティーセットがあるくらいで、特にコレと言った物は見当たら無かった。
「あいつらが置いたんじゃないのか?」
「んー?」
あいつらと言うのはディルやユーリの事だろう。
でもあの2人なら一言言うか、書置きくらいしそうなものだけど。
「開けてみれば良いじゃねぇか。中に手がかりがあるかもしれねぇし」
「ん」
一瞬『勝手に開けても良いものだろうか?』と頭をよぎるが、ここに置いてあったのだからおそらく大丈夫だろうと思い直し、箱を手にする。
上下に分かれるタイプの化粧箱で、5センチ角程のその蓋はすんなりと開ける事が出来た。
そこから出てきたのは…………。
「はこ?」
「いや、ただの箱じゃねぇだろ。どう見たって」
「ただの箱じゃないって、ビックリ箱とか?」
「…………俺はたまにお前がどこまで本気なのか分からないんだがよ」
隣を見れば明らかに呆れた顔をしているクレハの姿。
……心外である。
「今のところ冗談は言ってないつもりだけど?」
「俺は冗談であってほしかったよ」
「何で?」
「いや、この贈り主の心情を考えるとな」
「は?」
「まぁ、良いから開けてやれよ」
どうやらこのクレハには、開けてもいない箱の中身が何か分かっているらしい。
……と言うよりは見当がついていると言う所だろうか。
先程の箱より一回り小さなそれは一辺がくっついているタイプの箱で、作りもしっかりしているので、どう頑張ったところで中身を透視することは出来ないはずなのだが……。
まぁ何にせよ、ここで箱を見ていても始まらない。
私は無言で促す彼の視線を受けながら、そっと蓋を開けてみた。
「……やっぱりな」
中身を見て、クレハが呟く。
しかし、その声は私の耳を素通りし、あまり意味をなさないものとなった。
「な、んで……」
目の前にある、『あるはずの無い物』。
思考は『何で、どうして』を繰り返し、出てきた言葉はかすれてしまった。
ちゃんと返したはずなのに。
本人に渡したはずなのに。
それなのに、確かにそれはココにあって。
「何でってそりゃ、お前に惚れてる誰かさんからのプレゼントだろ」
「…………」
「ここに『X to Y』ってあるし」
「ぇ?」
見ればクレハの言葉通り、彼がつまみ上げたその内側に、前は無かった文字が刻まれている。
「あいつらの目を盗んで置いてったんだろうな」
「置いて……?」
その言葉に、私は先程まで見ていた夢を思い出した。
……いや。
正確に言うならば彼だけは違っていたのだろう。
彼だけは現実だったのだ。
そうだとすれば夢の中でかけられたと思っていた眠りの呪文にも納得がいく。
彼はこの場に、目の前に。
この指輪の様に、確かに存在していたのだ。
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