約束をした訳じゃない。
確証がある訳でも無い。
それでもじっとしている事も出来なくて。
私はただひたすら月明かりと記憶を頼りに走って走って走って───そして。
力尽きた。
いやはや何とも情けない話である。
───が、もともと体力がある方では無いし、仕方ないと言えば仕方の無い事のようにも思う。
そんな言い訳を誰にともなくして、肩で息をしながら辺りを見渡せば黒々とした木々が、耳を澄ませば微かに水音が聞こえてきた。
そうして思い出すのは、むかしむかしの事。
まだ私が塔に来たばかりだった頃。
知らない人だらけで、右も左も分からなく不安だったあの頃。
そんな時、一人の神官が現れた。
黒いマントに肩口で切りそろえられた髪。
その顔にはいつもニコニコ笑顔を張り付け、私に色んな話を聞かせてくれた。
それはこの世界の遠い遠い過去の事。
ハチャメチャな女魔術師さんの話や、おとぼけ剣士さんの話。
正義の姫巫女さんや、お茶目な魔剣士さん、そして少しばかりの彼自身の事。
───ずっと。
ずっと待っていたのだと。
懐かしむように、嬉しそうに。
そう言った彼から目を離せなかったのを思いだす。
「まったく、面倒な事は嫌いって、言ってるのに……」
息を整えながら呟き、私は足に力を籠める。
そして一歩一歩、目的地に向かい歩き始めた。
昔彼が連れ出してくれた思い出の場所へと───。
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