はぴろじ(1/8)

約束をした訳じゃない。

確証がある訳でも無い。

それでもじっとしている事も出来なくて。

私はただひたすら月明かりと記憶を頼りに走って走って走って───そして。





力尽きた。




いやはや何とも情けない話である。

───が、もともと体力がある方では無いし、仕方ないと言えば仕方の無い事のようにも思う。

そんな言い訳を誰にともなくして、肩で息をしながら辺りを見渡せば黒々とした木々が、耳を澄ませば微かに水音が聞こえてきた。

そうして思い出すのは、むかしむかしの事。

まだ私が塔に来たばかりだった頃。

知らない人だらけで、右も左も分からなく不安だったあの頃。

そんな時、一人の神官が現れた。

黒いマントに肩口で切りそろえられた髪。

その顔にはいつもニコニコ笑顔を張り付け、私に色んな話を聞かせてくれた。

それはこの世界の遠い遠い過去の事。

ハチャメチャな女魔術師さんの話や、おとぼけ剣士さんの話。

正義の姫巫女さんや、お茶目な魔剣士さん、そして少しばかりの彼自身の事。



───ずっと。

ずっと待っていたのだと。



懐かしむように、嬉しそうに。

そう言った彼から目を離せなかったのを思いだす。



「まったく、面倒な事は嫌いって、言ってるのに……」



息を整えながら呟き、私は足に力を籠める。

そして一歩一歩、目的地に向かい歩き始めた。

昔彼が連れ出してくれた思い出の場所へと───。

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