「もう一度って……」
それではまるでこれが最後みたいじゃない───。
そう続けようとして、私はその言葉を飲み込んだ。
こちらを真っ直ぐに見据える瞳に宿る、紫の光。
その普段は見せない彼の瞳が、まるで『そうだ』と肯定しているようで───。
「本当のことを言うと、ユウさんには此処に来て欲しくなかったんです」
「…………」
「もっと言えば会いたくなかった」
淡々と紡ぎだされる言の葉。
彼の表情は変わらず、困ったように笑っている。
ここに来た私を否定する言葉を吐きながら。
それでも瞳は拒絶する事なく。
手は愛おしそうに頬に触れる。
……一体何だと言うのだろうか。
もう一度話したかったと言うその舌の根も乾かぬ内に、会いたくなかったと言うゼロス。
嘘を言わない彼の事だからおそらくどちらも本心なのだろう。
だが……。
「矛盾してるってわかってる?」
「えぇ、わかっています」
問えばそんな答えが返り、彼はそっと瞑目した。
そして徐に私を拘束する。
けれど、それはとても儚げで。
私が振りほどこうと思えばすんなりと離れてしまう程に弱弱しい。
何かを躊躇っているのだろうか?
そんな事を思いつつ、私は口を開く。
「…………ねぇ」
「はい?」
呼びかけに応えたゼロスの瞳が再度開かれる。
その瞳が反らされないように、私は彼の顔を両手で挟み込んだ。
この瞳を見るのは何度目だろうか……。
そんな事を頭の隅で考えながら、彼の視線をしっかり受け止めて、私は言う。
「私に言いたい事があるんでしょ?」
あったんでしょ?
随分長い事待たせちゃったけど。
私はその約束を守るためにココに来たの。
ゼロスに会いに来たの。
───それなのにその約束を破らせる気?
言いたい事だけ言って、後はただじっとゼロスの双眸を見据えた。
ここまで言わせておいてまだ何か躊躇うようならこのまま頬を抓ってやろう。
そんな気の短い考えを起こした時。
困惑していた瞳が閉じられ、彼は「ははっ」と小さく笑った。
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