「……ゼロス?」
「やっぱりユウさんには千年経っても敵いませんね」
言ってゼロスは私の手の上に、そっと手を重ねてきた。
体温を持たないその姿はひんやりとしていて心地よい。
そんな事を考えていると、あっさりと手を取られ───。
「これも……」
「……?」
呟くゼロスの顔を見ようとするものの、いつの間にか抱きすくめられていた体は身動きが取れなかった。
なんという早業。
なんという流れ技。
そうこう思っている内にも彼は私の左の肩口に頭を乗せ、囁く。
「僕ね、ユウさんにずっと言いたい事があったんです」
「…………う、ん?」
穏やかで艶を帯びた声に、思わず言葉が詰まる。
「聞いてもらいたい事があったんです」
「…………ん」
それでも何とか聞く意思を伝え───。
「 」
そうして耳元で囁かれたわずか四文字に、私は今度こそ答えに窮した。
言葉の意味を解し、思わず目の前の服を掴む。
今までにも言われた事はあったのに。
前に言われた時はただ単純に好いてくれているのだと思っていた。
でも、だけど。
ゼロスを取り巻く雰囲気が、私を捕らえた腕が、ただの好意じゃない事を物語っている。
私は何と言っていいのか分からず、目を閉じるとそのまま彼の胸板へと額を押し付けた。
聞こえてくるのは先程から変わらず、木々のざわめきと水音だけ。
心臓を有さない彼の心音は聞こえない。
それでも、いつもと違う雰囲気に緊張している一面を見つけ、私の唇は弧を描いた。
彼でも緊張するのかと───そう思ったのに。
ゼロスは「でも」と前置きをしてから悲観するように言葉を続ける。
「僕は───魔族です」
───と。
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