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「じゃあ、これからも宜しくね」

「……は……いえいえいえ! ですからこれ以上ユウさんに関わる気は……っ」



私の言葉に一瞬頷きそうになるものの、ゼロスは慌てて否定の言葉を口にする。

それに被せるように私は彼に確認した。



「でもゼロスは私の幸せを望んでくれるんでしょ?」

「そ……っ、れは……はい」

「だったら、これからも宜しくね」

「いや、ですから! 何で『じゃあ宜しく』になるんですかっ! 僕の話聞いてましたっ!?」

「もちろん。分かったって言ったじゃない」

「だったら何故……っ」



いつもの余裕はどこへやら。

慌てふためく様を見つつ、それでも重い空気が払拭したことに安堵する。

とは言ってもこのままでは話が進まないので、今なお否定的な言葉を並べるゼロスの口に人差し指を当て黙らせた。

そして困惑するゼロスを見ながら私は言う。



「私の幸せにはゼロスが必要だから」

「っ!?」

「だからこれからも側に居て欲しいの」

「でも……僕は魔族で……」

「そうね。魔族で、謎の神官で、都合の悪い事は『秘密です』の一言で済ませちゃうホットミルク好きの、私の大切な存在よ」



ハッキリと、ゼロスの瞳を真っ直ぐに見据えて宣言する。

嘘偽り無い私の気持ちを。



「その私の大切な存在が幸せじゃなかったら、私もハッピーとはいかないんだけど?」

「でも……いくらユウさんがそう言ってくれたところで、ユウさんの周りにいる人は許さないでしょう」

「どうして?」

「どうしてって」

「私の幸せにはゼロスが必要なのよ? 私の幸せを望んでくれる人なら許してくれなきゃおかしいじゃない」

「そ、れは……」



言い切る私に閉口するゼロス。

それを見て、私は肩を竦めながら更に続ける。



「まぁ、これから先もゼロスが必要とは限らないけどね」

「っ!?」

「でも今は必要。これは本当」



言って私は微笑した。

少しでもゼロスの不安が消えるように。

彼に笑顔が戻るように。



「だから、不要にならないように私の側でいつもの様にニコニコして、たまに何かを企んで、いじけて、おどけて、ゼロスらしく居てくれれば良いの」

「…………」

「それでも周りの目が気になるなら……」



一旦そこで言葉を切ると、私は勢いよくゼロスに飛びついた。



「っ!?」



流石の彼も突然の事過ぎてバランスを崩し、湖へとダイブする。

もちろんゼロスにしがみ付いた私も水中に道連れになった。

いや、この場合だと彼の方が道連れになったと言う方が正しいか。

驚きに目を見開くゼロスを見ながらそんな事を考えつつ、私は彼の頬を手で包み込み彼の額へと口づける。

そして、口許へ人差し指を当て笑う。



これなら誰にも見られないでしょ?



湖面は月の光で明るいものの、数メートルも下がれば薄い闇が支配する空間へたどり着く。

人の目は届かない、内緒の逢瀬。



ゼロスは数瞬困ったように眉を寄せた後に瞑目し、唐突に私を抱きしめた。

先程とは違い少し痛いくらいに、力強く。

そして───。

穏やかで、面映ゆそうな笑みを浮かべたゼロスが口を動かした。

それは先程と同じ口の動き。





「ス キ で す」





水の中。

もちろん声は聞こえない。

けれど確かにそう言ったのが分かり、それに応えるように、私の気持ちも届くように。

ぎゅっとゼロスに抱き着いた。

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