───闇の中から覗く、赤き瞳。
獣のように息を潜め、それはジッと待っていた。
獲物が隙を見せるのを。
獲物が罠にかかるのを。
「何か一昨日辺りから、妙な視線を感じるんですよねぇ……」
夕食の席でポツリと述べた私の言葉に、一番最初に反応したのはリナさん。
「一昨日からって……ずっと?」
「いえ、主に一人になった時に感じるんですが……着替える時や寝る時は良いとしても、さすがに本を読んでる時は気が散るので止めて欲しいんですよね……」
『いやいやいやっ!』
呟くように言った私に、リナさん達が慌てて突っ込みを入れる。
「おかしいから! その感性絶対間違ってるからっ!!」
「そうですよっ! 明らかに悪ですから、それっ!」
「ですよね。人の至福の時を邪魔するなんて悪ですよね」
「そうじゃなくてっ! 着替えを覗くのは立派な犯罪です!」
………………あぁ。
そういう事か。
「大丈夫です、慣れてますから」
「何がっ!?」
「何にっ!?」
取り乱すリナさんとアメリアさん。
それを見ていたガウリイさんは、お肉を口に運びつつ、
「その視線の主に、心当たりは無いのか?」
「……コレと言っては……」
首を振る私。
それに対し、今度はゼルガディスさんが訝しげながら聞いてきた。
「それってアイツじゃないのか?」
「アイツ……?」
首を傾げ分からないと示すと、何故か彼は溜め息を吐き、
「あぁ、あの謎の神官だ」
と言ってのけた。
それに頷きポンと手を叩くリナさん。
「なるほど」
「その可能性は大きいですね。ゼロスさんなら平気でお風呂だって覗きますよ、きっと!」
いや……その確信はいかがなもんかと。
確かに彼なら有り得そうだが……。
でも───……何か違う気がする。
何が……と言われると答えることは出来ないが……。
だが、
「今度気配感じたら呪文でぶっ飛ばしちゃいなさい」
そうリナさんに助言され、私は苦笑しながら頷いた。
どの道これといった実害は今のところ無いし。
まぁ、いいか。
私は深く考えるのを止め、それと同時に食事も切り上げる事にした。
「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」
「おやすみー」
「おやすみなさい」
「あぁ」
「ゆっくり休めよ」
「はい、おやすみなさい」
挨拶を済ませ、私は今夜泊まる部屋へと足を運ぶ。
部屋に入り上着を脱いで側の椅子に掛け───と、その時。
備えつけのテーブルの上に置いてある小瓶が目に止まった。
食事の前に一度荷物を置きに来た時には気付かなかったけど……。
瓶を手に取り中身を見ると、色とりどりの飴玉が入っている。
この宿のサービスなのかな?
そう思い、折角だからと一粒口に入れてみた。
瞬時に広がる甘味。
舌の上で飴玉を転がしながら味わい、ベッドの上に横になる。
───すると。
「……ふぁ……」
先程まで何ともなかったのに、急に瞼が重くなり……───。
私の意識は闇に落ちた。
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